さらにヘレニズム期に至って、ヘルメース→メルクリウスはアヌビスとも習合したという。「それは黒あるいは金色の犬の顔をして、左手にカドゥケウスをもち、右手で棕櫚の緑の枝を振るメルクリウスである、と言われていた」(カルターリ『西欧古代神話図像大鑑』)。ここまでくると、わけわからん。
五行説は森羅万象を5原素で説明しきろうとし、西方は4元素で説明しきろうとする。両方を比較して大きく異なるのは色の配当であろうか? 五行説が「土」を黄色とするのは、恐らくは黄土のせいであろう(右図)。エジプトでは土は黒、これは希臘においても同じである。
(幾つかの仮定の上ではあるが)描かれる『エヌマ・エリシュ』の「世界のホロスコープ」は、
太陽:白羊宮
月:金牛宮
水星:処女宮
金星:双魚宮
火星:磨羯宮
木星:巨蟹宮
土星(ニヌルタ/ニンウルタ):天秤宮
黄河、揚子江の2大河を擁する中国は、魚身人面の動物もさすがに多様で、名称も人魚、セキジュ、氐人、陵魚、テイギョの5種に分かれるという(九頭見和夫『日本の「人魚」像」』)。テイギョというのは、どうやら、山椒魚のことらしい(碓井益雄『イモリと山椒魚の博物誌』)。
ものの序でに云えば、インドラ神の武器がvajraであるのに対し、ヴィシヌ神のそれはチャクラcakramといわれる。このチャクラがタロット・カードの「コイン」の基ではないかといったのはP・ホール(『カバラと薔薇十字団』)だが、話題になったことを聞かぬ。
「この悲劇的なユダ王国末期に、ユダではエレミヤが預言し、捕囚民の間ではエゼキエルが活躍した」。エゼキエル? 然り、バビロンのケバル河畔で、四つの生き物の幻視を視た預言者である。この四つの生き物がX「運命の輪」とXXI「世界」札に登場する。幻視の再現は難しいがレヴィの図が近いだろう。
暗号文書の7惑星配当
水星/金星/月/木星/火星/太陽/土星
を、ミトラス教の配当
水星/金星/火星/木星/月/太陽/土星
と比較すれば、月と火星を入れ替えただけであることがわかる。ミトラス教では、月と太陽は不可分の重要性をもっていたから、これを切り離すことはできなかったか?
時あたかも「狂牛病(BSE)」が世界を震撼させた時期と一致する(最初の発見は1986年イギリス)。牛が丸ごと焼却処分される画像が世界に配信されたこともさることながら、狂牛病の原因が、飼料として与えられた汚染肉骨粉が感染源と考えられることが衝撃を与えた。牛は牛を食べさせられていたのだ。
→この期を境としてヘルメス-メルクリウスは地上的啓示神にして金属の精という二重の性質を帯びるようになり、いわばヘルマプロディトス的存在と考えられるようになったのである」(ユング『心理学と錬金術』)。
「哲学の卵」の中にメルクリウスが太陽と月の上に立っている(『沈黙の書』)。
ヴェーダの民は、「草原で遊牧的な牧畜の生活をしていたインド・ヨーロッパ語族が共有していた宇宙意識」つまり「天的な宇宙観を運んできた」。しかし、文化=宗教葛藤は一方的であることはできない。天的宇宙観が大地的なインダス文明の宇宙観と遭遇したのである。