レヴィが『高等魔術の教理と祭儀』において言う「ヘルマヌービス」とは、古代末期、ヘルメースとアヌビスとが(霊魂導師という同じ属性から)同一視された結果(Ἑρμῆς + Ἂνουβις)生じた「アヌビス」のこと。
右図はカルターリ「アヌビス」(『西欧古代神話図像大鑑』)。
ところが、チャトーの『カードの起源と歴史』には、初期のポルトガル・カード(左図)を採録し、貨幣を指すと考えられる丸い形はチャクラを、棍棒(左下)の先のダイヤモンドとともに、ヴィシュヌ神の持ち物(右図)であることを示唆している。
このことは、繭を熱水に浸してほぐれやすくして、糸を引くという方法をすでに知っていたことになる。ということは逆に、この神話が弥生時代を遡るものでないことを想わせる。『野蚕録』にはじつに22の工程が挙げられているが、中心は、やはり、繭を熱水に浸すことである。
ものの序でに云えば、インドラ神の武器がvajraであるのに対し、ヴィシヌ神のそれはチャクラcakramといわれる。このチャクラがタロット・カードの「コイン」の基ではないかといったのはP・ホール(『カバラと薔薇十字団』)だが、話題になったことを聞かぬ。
X「運命の輪」札にスフィンクスが鎮座している所以は既述。スフィンクスが即自的に右を向いているのはそれが生成の方向だからであろう(逆は還元の方向)。対向的に車輪の右を昇っているἙρμάνουβις は、希臘時代にヘルメースとアヌゥビスとが習合した神格で、早くも「イシスとオシリス」E61に出る。
「セフィロトの木」に”ダート”を加えることは、その作用の意味を完全に理解した者でなければできない……「ダートを要請することによって「創造の三位一体」の問題は明確になろう。……”ダート”はそれによって世界が確立される「言葉」から構成されるものとして図式化できるから」(P・ホール)
②ボイオティアのタナグラ人には牡羊を首回りに担いだ像。こうして市壁のまわりをメルクリウスが巡り歩くと悪疫が焉んだからだという(9巻22,1)。
③アルカディアからオリンポスのユピテル神殿に奉献されたメルクリウス像は、頭に兜を被り、兵士の短い鎧を纏い、腕に牡羊を抱えていた(5巻27,8)。
「そのとき「神」は、つむじ風の中からヨブに応えた。『おまえはプレイアデスを鎖で結び、オリオンの綱を外せるか。かのマッザーロースをその時に引き出し、また熊と彼女の子らを導けるか』」(ヨブ記38章31-32)
中国の錬金術は(錬丹術と呼ばれるが)、「中国では……生理学的で内省的な訓練に劣らず、自己修養の一形式、超越へむかう一手段であった」(N・セビン『中国の錬金術と医術』)。
悟達した仙人は「日中に行くも影無く」の情態となるという(吉川忠夫「日中無影」)。