(2/4)
「京都へ行き、三条の橋の脇に三日滞在して、本格的に休息をした。東海道を下り、大磯に泊まった晩に、髪を切って撫でつけになった。それから川崎に泊まって、家に案内を出したから、大勢が迎えに来て、十二月九日に江戸へ帰った。」
#はやおき訳
車椅子ver.2。
背もたれが頭まであった方が安心感がある(し居眠りできるか)と思って背もたれ長いヴァージョンにしましたが、夏場は暑いかもしらん。あと、主人公のトレードマークであるロングヘアが後ろからの図だと隠れるのがどーか…。
(3/4)
「小林が、
『この刀を買いましたが、切れるか切れぬか見てくれろ』
と抜かした。おれは刀をよく見て、
『骨くらいは切れるだろう』
と言ったら、小林は刀を収めて去って行った。人が大勢立ち止まって見ていた。とんだ無法者だ。」
(2/4)
「ある暮れに、親類に金を借りに行った時だ。小林が酒を食らった勢いで、おれが通る道の横丁から、いきなり刀を抜いておれの鼻先へ突きつけた。
昼だから、行き交う人も大勢見ていた。おれはわざと懐手をして、
『白昼に、ナマクラを抜いてどうする』
と言ったら、」
(3/4)
「『江戸に入ったら、家まで送ってやろう』
と、府中まで連れてきてくれたが、その晩、親方が博奕のケンカで大騒ぎを起こした。おれの世話をしてくれた親方は国元へ帰ることになり、単物を引き取って、代わりに木綿の古襦袢をくれると、すぐ出て行ってしまった。」
(2/4)
「医者が、
『今晩にも命の保証はできませぬ』
と言った。家のやつらは泣いてばかりいるから、思いきり叱り飛ばして、叩き散らしてやった。」
#はやおき訳
(4/4)
「篠田という外科を、地主が呼んでくれていた。傷口を縫う手術が始まったが、医者が震えている。おれは刀を抜いて息子の枕元に立て置き、睨みをきかせていたから、息子は少しも泣かなかった。
医者に息子の容態を聞いたら、
『今晩が峠でございます』
と言う。」
(2/4)
「『息子が三歳になるから、私は隠居をして家督を譲りとうござります』
と、手紙で言ったら、親父は、
『それは悪い考えだ。これまでいろいろ不埒があっただろう。一度はご奉公して、世間の人の悪評を静め、養家へも孝行して、そのうえで好きにしろ』
と言ってきた。」
(4/4)
「遠州掛川宿に着いた。昔(※2年前)、中村帯刀を世話したことを思い出したから、問屋場で、
『天宮の神主の中村斎宮まで、水戸の御祈願で行くから、駕籠を出せ』
と言った。すぐに駕籠を出してくれたから、乗って森の町という秋葉海道の宿場町へ行った。」