ほぼ在京の伊勢備前守家の出身で青臭く領地経営に乗り出そうとする主人公・新九郎の「京から目線」に対し、同じ伊勢一門ながら備前守家と確執のある掃部助家の盛頼が、唯一本気でキレた場面ではなかろうか。
ナイナイのオカツネ会長しかり、いしいひさいち作品のナベツネツネオしかり、平成エンタメを彩った偉大なヒール(言葉を選ばず言うなら「老権力」の代表格として)であり、しかし言論界において無二の存在感を放った巨人だったことは間違いない
野坂昭如の文体は、やたらめったらに一文が長いのたけど、これを見てくれ、3ページにまたがる長大な一文に、敗戦直後の省線三宮駅の「臭気」がこれでもかとばかり、まるで都々逸のようなテンポ良さで詰め込まれているのだよ。
あまり漫画引用はよろしくないが、ゆうきまさみ『鉄腕バーディー』のこのセリフを時折思い出す。結局「善良な市民」(ワシも含む)の最大公約数は、こういう側面があり、それはそれで否定しないけど、あまりやりすぎると(そして国家が積極関与すると)それはディストピアへの第一歩なんだよな
あの日に得られなかったものを、我々はいつも追いかけてしまう。だけど、時は過ぎ、機会は失われ、今に至るのである。それを後から悔いても、何もできず、今この目の前の何かを掴みにいくしかないのである