そういうありえるかもしれない未来を孕ませようとする署名から必死で逃れようとする指の動きを強調する書き文字たちのユーモラスなこと。吉村が押さえつけられることでキャラクターが静止させられ、指自身が声を獲得し生き生きと動きだす。
捺印、それ自体をパフォーマティブな「アクション」としてマンガでやってるのが『ナニワ金融道』最大の面白さというか。この一回的な出来事には人情とか説法が入る隙がない。
最終巻で3ページ使って描かれる偽造の様子なんてまさに「「形式的な」虚構にすぎないその名前が、印刷された大量のコピーとしてあたりに流通することでしかるべき現実感を獲得する」(蓮實重彦『帝国の陰謀』67頁)のを見せつけているようで、それをやってしまったからか連載が終わるのも衝撃的。