家の前まで送ってもらい、また明日ねと七海は帰っていった。俺はといえば部屋に帰るなり余計なことを考え始めている。何が琴線に引っかかったのか、さっき見たはずの七海の顔が離れてくれない。昔はとても大事だったものが知らずのうちに消えていたような、そんな感覚が息苦しかったのを憶えている
家庭の事情から地元を離れて数年後、またも家庭の事情で地元へと戻ることとなり、いい機会だからと前の友人に連絡など取ってみた。昔仲の良かったあいつは元気にしているだろうか、電話口に出たのはおばさんだったけど事情を話すと駅まで迎えによこしてくれるということに、それがつい昨日の話である。