【76年前の11月1日】「一般に教養ある日本人が、終戦以来の連合軍司令部に心中快哉を叫ぶがごとく見ゆるは考うべき問題なり。余のごときはその命令が適切なればなるほど、それだけ癪に障ることおびただし。されど…だんだんとかかる新教育に馴致されゆくこととなるべし。実に残念無念なり」#不戦日記

【75年前の8月11日】「余は日本の命脈があと二、三ヵ月のごとき感じ、昨夜せり。しかれども若しこれが事実ならば、あと十日とすら思う。ここまで切迫せりとは愕かざるを得ざれど、敵が原子爆弾を使用せる以上、戦争は真に無益なりといわざるべからず」#風太郎不戦日記 #勝田文 #山田風太郎 #不戦日記

【76年前の12月23日】「午前伯父と米を搗きに村外れの発電所に出かける。この村にはまだ電燈がひいてなく、村外れに小屋を作り山の上から鉄管で水を落し電気を起している。村人が交替で夜電気をつけにゆき朝消して戻るのである」 #不戦日記 #山田風太郎 #勝田文 #3巻は7月20日発売

【76年前の10月18日】「四時半、飯田発下り電車で東京へ。眠くてぐたぐた居眠りするばかりだ（中略）午後二時新宿着。東京は相変わらず物凄い人間の波だ。青梅口の広場には、女や老人が路傍に腰を下ろして見わたすかぎり露店をひらいている。いわゆる新宿マーケットであろう」 #不戦日記 #山田風太郎

【76年前の9月30日】「午後医談会なるもの飯田保健所にて開催さるるときき、寮生一同ゆく。鮮やかな午後なり（中略）スマートな白き米軍機二機、爆音高く町すれすれに旋回して去る。一時開催の予定がなかなか開かれず、余イヤになりて帰る」#不戦日記 #山田風太郎 #勝田文

【76年前の11月7日】「◉茨城から葱、里芋、大根など持って来てもらう。このごろ芋飯に芋の味噌汁のみでヴィタミン欠乏症になりそうなゆえなり。◉小泉丹『生物体の機構』を読む」 #不戦日記 #山田風太郎 #勝田文

【76年前の10月17日】「煙草をのみのみ、さっき（天竜峡）駅前の売店で買って来た読売報知を見る。二面に『陸軍最後の日』と題する読物が載っている。『終戦交渉も知らず、独善の本土決戦』とかいう見出しで書いてあるが、日本陸軍最後の苦悶はわれわれの魂をゆさぶらずにはおかない」#不戦日記

【76年前の10月4日】「食糧事情の未来暗澹といわんよりも絶望的なり。このぶんでゆかば八百万ないし一千万の餓死者の出ずるは必定といわる。しかも米軍は食糧輸入を許さず冷然たり。『日本政府無為無策なり』と責めらるれど、政府如何すべき」#不戦日記 #山田風太郎 #勝田文

【76年前の8月7日】 この日の風太郎の日記には「ヒトラーが生きているという噂が絶えない。確証ある屍体が発見されないのだから、これは当分連合国側の夢魔であろう」とある。何が真実かわからない中、着実に敗戦に近づいている空気は感じ取っているようで…。敗戦まで8日の夏の日。 #不戦日記

【76年前の12月4日】「新宿の焼けてなき中村屋の前で人集まる。のぞきみれば進駐兵、暗きところに両掌に煙草とチョコレートをのせて、蝿のごとく集まる日本人をもの哀しき顔にて見まわして『チョコレート』と呟いている。とても勝利の兵とは見えず」 #不戦日記 #山田風太郎 #勝田文

【75年前の9月19日】「『死ぬは易い。しかし敵に堂々と日本の所信を明らかにしなければならぬ』と彼（東条英機）はいっているそうである。それならばそれでよい。（中略）それならしかしなぜ自殺しようとしたのか。死に損なったのち、なぜ敵将に自分の刀など贈ったのか」#不戦日記 #勝田文

【76年前の12月10日】「電車混み、入口ふさぎ、降りる人降りる能わず、『電車は逃げちまやしねえんだから、あけてくれったら！ これだからいくさに負けるんだ！』と怒鳴った者あり、みな悲しげな笑い声、民衆はヤケになっている」 #不戦日記 #山田風太郎 #勝田文