もちろん律さんもそれは知っていて、自身も忙しい身なのに甘利を引き取ってから半年間合わせなかったのは甘利の気持ちを汲んでのことです。つまり律さんが祖父母に会わせたかったわけではないのね。だから、甘利に会いたかったのはおじいちゃんおばあちゃんの方で、こんなの当然杞憂なんですよ
甘利のお父さんは島の観光を支えていて、お母さんは島の医療を支えていて、甘利にとっては島の全員から愛される自慢の両親で、二人のこと嫌いな人は甘利の世界にはいなかったんですよ
両親を好きな気持ちは甘利の全ての根幹です
甘利の祖父母は甘利の中で両親をよく思ってない唯一の人たちなんですよね
甘利家はお母さんが病気になってから、お母さんの希望で延命はせずに家族3人で日本一周しにいきました。
甘利はちょっとだけ覚えていて、日本中どこに行っても楽しい思い出がいっぱいでちょっと泣きます。耕介は甘利のために美味しいものいっぱい調べていっぱい笑って一緒にちょっと泣きます。
相互さん耳タコで本当にごめんなんだけど
ここから既に耕介らしいというか負けフラグで
オレと一緒に、とは言わないんですよね
ひとりにならないで、誰もいないならオレが一緒に行くからっていう
自分が相応しくないのはもう知ってるんですよ でも一人にしたくなかった それだけなんです
なんとなく伝わってると嬉しい
耕介は人生の特別な時間は大切な人と過ごすべき、みたいな思いが強くて
今日が甘利にとって人生の分岐になる特別な日なのもわかってるし、そこに立ち会うのが本来自分じゃないのもわかってます
例えばそう、君の肩を抱きしめられて、君の欲しい言葉を言えるような誰かと
甘利結〜〜〜〜〜ってかんじで好きこれ
人に好意を向けられることに慣れすぎている
もし言ってても「ありがと!嬉しいな」くらいだったんだろうな 甘利は耕介にとってその一言がどれだけ重いか知らないから
大きくは変わらなかったんだろうけど、言えてたら耕介の中で結末がもう少し違ったと思います
甘利はその日出会ったお客さんと仲良くなって喜んでもらうことが仕事でした
人のいいところを見つけるのが得意でみんなのことが好き 好きって言葉が本当に軽い
正直者の耕介は今までの彼女にも好きと言ったことがありません 耕介が言おうとしたのは、人生で初めて恋した君に贈りたい言葉だった
耕介の無表情は、誰もオレのこと好きにならないでっていう耕介なりの無言の抵抗なので、耕介の見た目に一ミリも興味ない甘利の前ではそうしなくてもいいんですよね
甘利の前では昔みたいに普通に笑ったりします
言葉にするとそれだけだけど、楽しいときに笑っていいのは耕介にとって8年ぶりなんですよ