現実の社会は、ナオキにとってはただ生命活動を維持するためにいるだけの場所で、当事者意識を持てない場所です。一方ネット上にはまだ居場所がある。でもそれも「存在するだけで非難されることはない世界」というだけで、VRのコミュニティもナオキにとって別段居心地のいい世界、ということもなく。

全体として2話は「恋愛に至るまでの2人のエピソード詰め合わせ」という感じはちゃんと機能してたかな…水着エピソードなんてアニメでも5話とか6話とかに来るやつじゃないですか。そのイメージを逆手にとって物語を加速させることは出来てたかな…と、バズった後だから言えることですが。

ナオキは基本的にホナミからの褒め言葉を全て否定します。もう出来上がったナオキの人生観は褒め言葉程度では覆らない。しかし否定はするけど拒否をしているわけではない、というぐらいには受け取ってもいます。秒速50kmで駆け抜けるファーストラブです。残りの人生長くない。

この世界のVR技術ですが、基本的な考え方として「今より三年後くらいにありそうな技術」を想定してます（話考えたの2年前ですが）。VRchatを下地にしつつ、昔あった「セカンドライフ」的なビジネスがその上にのっかっているイメージです。ワールドもフルスクラッチではなくほとんどが自動生成かなと。

ホナミがぐっと行動的になる2話、圧縮に圧縮を重ねてできた話です。「トラブルメーカー」「可愛げのある一面」「明らかな好意アピール」に次々ナオキが畳み掛けるように翻弄されますが、もしこの漫画が長期連載モノだったら、2話の要件だけで半年は回せそう…

ナオキは派遣社員で、年収は300万未満の設定です。「実際の40歳こんなに老けてないだろう」というコメントが結構あったんですが、そういうキャラデザインを目指していました。（そんな奴いるはずない、という目線そのものがロスジェネ世代を透明化している云々…）。PC環境は無金利ローン12ヶ月払。

1話制作段階では、まだ最終話の流し方に明確なビジョンがなかったのですが「なにか印象に残る体験をさせて、それを最終話でも繰り返させる」をやろうとは思っていました。それが「きれいな夕日を見る」です。感情を動かすシチュエーションとしてはかなり弱いですが、まあうまく機能した…と思いたい！

この漫画は一話12Pと、ストーリーをやるにはやや少ないページ数のため、ナオキとホナミのキャラを一瞬で伝える必要がありました。それでひねり出したのが「硬い笑顔で挨拶エモートをするアバターと、それを軽蔑の眼差しで見る女子」という構図です。この関係性は3話後半までずっと続きます。

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