ホナミもフラグを立てつつ(最初の連載は月イチペースだったので、一応そういうの意識してました…)ホナミ自身にも、自分がVRにログインできる間にナオキに何かあげられないか…という焦りがあったんだろうと思います。ここまでずっとナオキの話だったのが、徐々にホナミにお鉢が回ってます。
「バーチャルセックスって何なん?」「現実的には男性同士で自分のアレをナニするんかいな」そこは話の本質じゃないわけです。その行いによって与えられるものがあると確信していれば、あとはゴーorステイです。ホナミの殺し文句が浮かんだ時点で、とも子の中ではセックスが成立しました。
一方、ホナミは自分が女性とコミュニケーションを取って得てきた感情を、女性の姿を借りた自分ならナオキに与えられるんじゃないかと試みます。ホナミの中に、女性性と母性が同時に発生してるカオスな場面展開で、この漫画が本格的にネジ外れてくるのがこのへんかなと思っています。
ただ、ナオキにはとうとう「女子側の視点で自分を省みる」機会が訪れなかった。彼は女子への憧れの残滓でVRの自分を作っています。華奢な体にまとわる軽いスカートの感触を手に入れた。でもそれは「女性を理解した」ということとは全く関係のない、ただただ身体だけを手に入れただけの話。
noteのあとがきでも触れましたが、ナオキの女子に対する憧れは、客観的には完全に間違ってるわけです。「見て見ぬフリしつつ、自分たちのテリトリーを作る」のだって処世術だし、その中でささやかないじめの構図に心を痛めていた女子がいなかったわけでもないでしょう。たぶん。
「世界中を巡る旅」言うて2Pで終わって3P目からベッドシーンなんですけど、この話はナオキが「自分の事を相手に話す」という形で、ナオキなりにホナミに報いようとさせました。(現実的には自分語りしている中年男性ですが。)
あとビートセイバー的なやつ…とも子はVRエアプ勢なのでビーセイやったことないんですけど動画見るのは好きだったのでオマージュさせて頂きました。(最近FGOのCMでも見たぞ)ホナミが2刀振りのイメージしてるのはブルース・リーのヌンチャクですね。ここでホナミの世代のヒントがちょっと出てる。
難しい話は以上で、3話はすごい心残りがあって、とにかくコスプレのシーンをちゃんとやり直そう!と固く心に誓っていました。あとモブがめちゃくちゃ多いのは単純にしんどかったです。デザインはVR界隈の著名なアバターさんやVtuberの意匠を参考にさせていただきました。
ナオキには複雑な感情でそれを受け止めるものの、少なくとも「おもしれー女」ということではなく、ただただ「好意を打ち明けられたら、自分の人間性と向き合わざるをえない」という事の重さに打ちのめされてしまう。でも確かに恋は発生したんだという、そういう姿勢で営業している漫画です。
だからこそ、ナオキはそれを「人生からまるごと逃避したいんじゃないのか」と言われて、虚を疲れた形になります。ナオキ自身も自分の行動に逃避の要素があることなんてわかってるんです。その上でやってるんだから、野暮なこと言ってくれるな、という話でしかない。本来は。
ホナミが「タレント」だった事に気づいたナオキは強烈な疎外感を感じ、自己卑下を閉じ込めようとして一人その場を離れますが、彼はこれを「泡立つ心を抑えてフラットな自分を取り戻すため」の行動だと思っています。それはたぶん今後もナオキという人間のパーソナリティとして変わることはない。
ナオキにとってネット上、VR界隈の何がしんどいのかというと、ここはここで「アマチュアからタレントが生まれることを常に望んでいる社会」だと言うことです。多くの人がただ交流を楽しむだけで満足しつつも、どこかで「そんな人達の中にこんな才能の持ち主が!」的なスターのストーリーを求めている。