押井:そもそも映画作りは皆「引用」です、かつて見たものを使っているだけ。自分のはオリジナルだと思っている人がいたらそれは錯覚
石川:つげ作品自体、引用が多いですよね。眼医者のシーンも台湾の写真だし
押井:人間が見る夢も引用です。個人の創作は全て過去体験の引用だと言えます
#つげプロ
岩本:石川さんのランニング姿は山下清だと言われてますが、実は「紅い花」のマサジ少年だとか
石川:どっちも違います。演奏中に暑くなり結局裸になるんでこうしただけで、長髪から丸刈りにしたら山下清と言われるようになりました
岩本:じゃあ「紅い花」情報はガセですか
石川:ガセです
#つげプロ
岩本:押井さんは「うる星やつら」で「ねじ式」パロディをやられていますが、これはオマージュですか?
押井:僕自身は「引用」と呼んでいます。「ニルスのふしぎな旅」でも「エイリアン」のカット割りを引用しましたけれど、これは誰も気付いてくれなかった
#つげプロ
岩本:つげ作品の名脇役と言えば誰?
押井:これはもう、おかっぱ頭の女の子ですね。そもそもつげ作品は、主役が立たない
石川:基本的に主人公は、パッとしない男
押井:主人公は作者本人なんでしょう、だから「物語」とは違うんです。主人公はあくまでも案内役で、作品は「紀行」なんです
#つげプロ
岩本:不条理はいかにして作品に昇華されていくのでしょうか?
押井:本当の不条理=滅茶苦茶を作品に出来るか?出来ないと思う。例えば「ねじ式」の機関車のシーン、(映画でも)合成で作れるけれどこうはならない。映画は醒めていて没入感がない、その滅茶苦茶さに浸ることが出来ない
#つげプロ
岩本:石川さんは「ヨシボーの犯罪」がお好きだそうで、どの辺が刺さりました?
石川:「わざと下手に描いている」ところで、かなり高度な技術だと思います。そして夢の世界を「夢ってこうだよな」って感じに描いてるのが好きで、夢の世界を再現するって出来そうで出来ないと思うんですよね
#つげプロ
押井:「紅い花」「もっきり屋の少女」「沼」あちこちに同じタイプの女の子が出てきて、これは他のキャラとは違う、つげ作品の中でも特別な存在じゃないかと。
実は、特異な存在が「少女の形」と言うのは、アニメ・映画等創作の伝統でもあるんですよね。
#つげプロ
岩本:私のつげ初体験は小五で、ねじ式やゲンセンカン主人を読み「ヤバさ」を感じました
石川:作り物じゃないリアルさ
押井:芸術的なヌードとは違う、日常性がある生のエロス。
おかっぱ少女は、人間じゃない理想化された何かかもしれない。一方ちょっと太めの女性には生々しいエロスが
#つげプロ
押井:つげ作品はサイコパス的な非日常脇役がいなくて、日常にひょっこり、ちょっと変わった人が出て来る
石川:そう「あるある」みたいな感じの人が
岩本:押井さんは「チーコ」の女性が好きだとか
押井:例外的に気に入りました。おかっぱでもなく、肉感的でもなく、珍しいキャラですね
#つげプロ
押井:「もっきり屋の少女」が成長したのが「長八の宿」のマリちゃんだなんて説もありますが、立ち位置が同じなんです。格好よく言えばアニマですね。
#つげプロ