【75年前の6月1日】「浜で学童たちが整列して朝礼をやっている。南の方─宮城を拝し、それからいっせいに何やら合唱した。きいてみると『つぎの世をせおうべき身ぞたくましく　正しくのびよ里にうつりて』という皇后陛下のお歌だそうだ」疎開については、最新30号の不戦日記コラムをぜひご覧下さい。

【75年前の6月4日】「（混雑極まる東海道線内）冷然と一人車中に立ってあたりの光景を観察していた自分も、ついにこれには辛抱ならず、幼女をハミ出させた四十男の傍へいって、その肩を叩いてもとの位置に帰らせ、女の子を座らせてやった。女の子は本能的に座席に戻り、そのまま眠りに落ちてしまった」

【75年前の6月7日】「向いの青山の頂上に霧が白じろと漂って、けぶる雨、冷たい暗い光をはなつ但馬の風物。ずっと昔の『新潮』に中村武羅夫氏が、晴れた日の山陰の豊かな風景を絶讃し、山陰という名でだいぶ損をしていると書いていたような記憶があるが、見当ちがいだ。自分は実に適当な名前だと思う」

先週は「クロワッサン」「北海道新聞」でご紹介いただいた『風太郎不戦日記』。今日は某新聞の記者さんに取材を受けました。コロナで気の滅入る日が続きますが、75回目の夏となりました。8月はもうすぐです──。#風太郎不戦日記 #勝田文

【明日発売】今週のモーニングは4連休の影響で水曜日発売、ということで明日発売の34号に「#風太郎不戦日記 」第9話掲載です。風太郎が通う東京医専が長野県の飯田市に疎開をすることになり、彼の心に様々な感情が去来する─。そして、この東京ともしばしのお別れ。どうぞご期待ください！ #勝田文

【最新話】勝田文「#風太郎不戦日記 」第9話は、発売中のモーニング34号に掲載。東京を離れ長野・飯田へと疎開することになった東京医専。飯田で過ごす風太郎の「昭和20年・夏」をご覧ください。今回のタイトルは『飯田の青春』です。#山田風太郎 #不戦日記 #勝田文

【75年前の6月18日】「（長野県）飯田の町。昔は桃源郷にひとしかりしも、今は疎開者罹災者溢れ、決して楽にあらず。食物の配給は東京よりかえって悪いくらいなり。宿舎は以前疎開児童のいたる旅館、青年訓練所、あるいは倉庫（！）」飯田へ疎開が始まる直前の日記です。#風太郎不戦日記 #勝田文

【75年前の6月27日】「午後、馬車にのって飯田市郊外上郷村なる天理教会伊那支会の別館に移る。別館の二階は六十畳敷の大広間にて、将来これまた合宿所となる予定。夕、飯田市に今度新たに設けられた学校の附属食堂なるものへゆく。東京荒れはて学生はかかる雰囲気に飢えたれば、むやみに嬉しがる」

【75年前の6月30日】「飯田の町はばかに医者と散髪屋と風呂屋の多き町なり。ただし医者は商売柄、他の二者は東京でさんざん苦しみたればよく目にとまるものなるべし。『混同秘策』なりしか、ここに紙工場だか紙役所だかを設けよとありしように記憶す。堀久太郎秀政の城下なりし由」#不戦日記 #勝田文

【75年前の7月3日】「◉雨きれいにあがる。コバルトの空に水々しき純白の雲かがやきて白日町を灼く◉一日二合三勺の配給米。今後その一割を減らすむね政府発表。国民に与うる影響、或いは沖縄喪失以上か◉ポール・ド・クリュー『細菌の猟人』を読む」#風太郎不戦日記 #勝田文 #山田風太郎 #不戦日記

【75年前の7月12日】「夜、三河寮にごろ寝す。夜半しきりにB29の爆音上空を通過し、ざんざと降る雨中、町騒然たり。「待避ーっ、待避ーっ」とモノに憑かれたような逆上せる声街頭を駈けまわれども、みな蒲団より動かず」#風太郎不戦日記 #勝田文 #山田風太郎 #不戦日記

【75年前の7月17日】「◉夜半零時、豪雨の中に警報。敵機相当数本土を北上中なりとラジオ聞ゆ。江知家の婆さんに依頼されあれば、雨の闇夜を江知家に駆けつける。ニヒリストも婆さんには到底腕立てが出来ない◉北陸を襲いたるB29、南方脱去の際、しばしば飯田上空を通過す。爆音凄し、雨声また凄し」