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「婆あ殿がおれの面さえ見れば小言を言うので、おれも困った。兄嫁にも相談したが、兄嫁も気の毒に思って、おれの親父に話してくれた。
親父は婆あ殿に、
『小吉もだんだん年を取るが、収入の少ない者は、自炊しないとやっていけない。今後は、小吉の食事は当人にさせるようにしなされ』」
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「婆あ殿が醤油に水を入れたり、様々な嫌がらせをするから、気分が悪くてならなかった。〈中略〉親父に言えばおればかり叱るし、こんな困ったことはなかった。」
勝小吉14歳。居心地の悪い江戸の養家を抜け出し、上方を目指すことにした小吉。旅の二人連れと共に浜松まで行きますが、その晩、全てを失ってしまいます。
マンガ『夢酔独言』十二話(1/2)
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「その日は藤沢に泊まり、翌朝早く起きて宿を出た。どうしたらよかろうとフラフラ歩いていると、後ろから町人の二人連れが来て、おれに、
『どこへ行く』
と聞いた。おれが、
『あてはないが上方へ行く』
と答えたら、
『ワシらも上方へ行くから一緒に行け』
と言いおった。」
#はやおき訳
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「油断はしなかったが、浜松で泊まった時には、二人が道々よく世話をしてくれたから、少し気が緩んで裸で寝た。するとその晩、着物も大小の刀も、腹にくくりつけておいた金もみんな取られた。
朝、目が覚めて枕元を見たら、何にもないから肝が潰れた。」
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「どうしたらよかろうと途方に暮れていたら、宿屋の亭主が柄杓を一本くれた。亭主は、
『これまでも江戸っ子が、この海道でそんな目に遭うのは、よくあることさ。お前さんもこの柄杓を持って、浜松のご城下や外れへ行って、一文ずつもらってくるがいい』
と、教えてくれた。」
勝小吉14歳。上方を目指した旅の道中、持ち物を全て失ってしまった小吉。宿屋の亭主に「物乞いをすればいい」と、柄杓を渡されますが…。
マンガ『夢酔独言』十三話(1/4)
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「やっと思い直して、あちこち物乞いして歩いたら、一日で米や麦や五升ばかりに、銭を百二、三十文もらえた。宿へ帰ると、亭主は親切な者で、その晩は泊めてくれた。」
#はやおき訳
(3/4)
「翌日、亭主は、
『まず伊勢へ行って、身の上を祈るがいい』
と言ってくれた。もらった米と麦と三升ばかりに、銭五十文を礼にやった。
それから、毎日物乞いをして、伊勢の大神宮に参詣した。」
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「夜は松原や川原や、辻堂なんかで寝た。蚊にたかられてろくに眠れず、困ったよ。」