また、漫画版ナウシカの終盤が浄化神vs.人間/神がプログラムした未来vs.人間たちの生きる現在であったことと、もののけ姫の終盤が森の神vs.人間であったことも興味深い対比です。もっとも、「もののけ姫」で勝ったのが本当に人間なのか、仮に「勝った」としてそれが「よいこと」なのかは微妙ですが…
特にもののけ姫ラスト「アシタカは好きだが人間は嫌いだ」「それでもいい。森とタタラ場で互いに共に生きよう」という下りは、本当に漫画版ラストそのままといえます。
@Rag_na_6ck とはいえジルもユパに丸投げではなく、かなり厳しい族長の心得も教えています(それこそあのユパが躊躇う程に)。また、最期には父として娘の行く末を案じているのが印象的でしたね。
そして死の間際、ユパはナウシカにも(恐らく念話で)エールを送りました。それは彼女が敬愛する上人同様、愛しい風=ナウシカのこれからの道行きを祈念するものでした。
が、そのクシャナは仇敵である兄死亡後の虚脱と、何より憎悪で染めてきた己の過去に圧し潰されかけていました。7巻、土鬼避難民と一触即発の状態にあってなお、クシャナはユパの説得に対して最早手遅れと諦めの言葉を口にしています(駄々をこねているようにも見えますが…)
五巻以降、ユパの目的は専らクシャナを救い、「王道」に導くこととなります。即ち、復讐に燃えるアスベルを制してクシャナ一行を受け入れ、ナムリスに彼女を拉致された時には単身追いかけ、救出の機会を伺います。何故ユパはクシャナにそれ程入れ込んだのでしょうか?
しかし、かなり早い段階でユパは自分の限界も悟ります。ナウシカが見つけた秘密ー清浄な土と水の中では腐海植物も瘴気を出さないーを目にしたユパは愕然とします。自分が半生追い求めたナゾのカギが目の前の少女にあることに今まで気づかなかったとは!
漫画版・映画版とも物語冒頭のユパは「探す者」として行動します。腐海の存在意義、そして人類は腐海にこのまま呑まれる定めなのかについて答えを求めるべく、ユパは長らく腐海をさ迷ってきました。
東京五輪2020との奇妙な符合が有名なAKIRAですが、劇場版にはまた最近の、目的を全く見失いつつある某国暴動についても実に示唆的な場面があります。暴徒に祭り上げられた鉄雄いわく「あいつらはぶっ壊してくれる奴なら誰でもよかったんだ」…これが神作か…
また、シュワ突入直前、ナウシカは同行する蟲使いたちに「世界の真実」を語ります。腐海が世界を浄化した末に、いつか清浄な世界へ辿り着けるという「偽りの真実」を。
最終幕、墓所の体液で青く染まったナウシカは、夕日を受け金色に輝くシュワの都跡に降り立ちます。あたかも「青き衣の者」伝説をなぞるかのように。
その事実ー人間の愚行が粘菌や、本来全く無関係な腐海・王蟲の自己犠牲的死まで招いたことーの重さに耐え兼ねたナウシカは自らも死を望み、結果虚無に喰われかけてしまいました。