ところで、僧正は自分の計画をケチャにだけ明かしていました。勿論、部族全体に累が及ぶのを防ぐ為ですが、彼女が「例外」となったのは、お付という立場上、どのみち連座は免れないため、逆に計画を知らせることで、いざというときの身の振り(アスベル達との逃亡)をしやすくさせたのかもしれません。 
   閑話休題。王蟲培養槽は破壊できたものの、突如現れた皇弟により叛乱は失敗、ケチャはユパ達と辛うじて脱出しますが、彼女が敬愛する僧正は、彼女たちーもっといえば「友」たるナウシカーを庇い殺害されてしまいます。 
   そのこと(僧正がナウシカに殉じたこと)に彼女も気付いたのでしょう。逃げ延びた彼女は荒れ狂います。「死んだら何にもならないのに…」の呟きからも、多分ケチャ自身、その怒りが半ば八つ当たりであることに気付きながらというのが切ないですね。 
   こうしたケチャの怒り・悲しみはアスベルにも痛い程解るものでした。彼も故国を失い部族を皆殺しにされた身であり、ナウシカとの出会いを経てもなお、機会あれば復讐の炎は燃え上がるのですから。…そんな境遇から二人は次第に親近感を覚えていったのかもしれませんね。 
   実際、この後は割とすんなり打ち解けていきます。アスベルと一緒に蟲の卵の食事に仰け反ったり、自分の激発を庇って怪我をしたユパに素直に謝ったり。ここでは、彼女の気遣いへのユパの返しもまた素敵ですね…! 
   一方、ナウシカについては少し微妙な態度が残るように見える場面があります。アスベル達と違い、彼女がナウシカと殆ど同行していないこともありますが、やはり「ここにいる自分(達)」を脇においてナウシカが話題の中心になるのは、何となくモヤモヤするのかもしれません。 
   そして彼女(とアスベル)の本編で語られざる見せ場、マニ族説得編です。ユパ達と別れ、アスベルと二人で土鬼難民宿営地に潜り込んだケチャ達は遂に古巣マニ族の説得に成功、土壇場で皇兄ナムリスに反旗を翻させることに成功します。 
   即ち7巻、難民宿営地で一触即発となったマニ族vs.トルメキア軍の対立を、ユパが身を挺して鎮めるのですが、この時に決定打となったのは、ユパの死に重ねられた僧正(の現影)の復活でした。 
   これについてはやはり、戦を避ける「ナウシカの道」=それに殉じた僧正という図式が必要であり、「ナウシカの道」を説き広める者が必要です。そして、その役割を担った者こそケチャ達であり、だからこそ僧正の幻影を「演出」したチククも「ちょっと手伝っただけ」と言ったのかもしれませんね。 
   上記には大分妄想が入ってしまいましたが、見所としては最期を迎えるユパに真っ先に駆け寄り、その死を心から嘆き悲しむところでしょう。他の者がユパの犠牲に感謝する、その遺志を噛み締める中で、ユパ自身を心から案じるケチャはやはり凄く心優しい良い子ですね。 
   ちょっと蛇足。この辺りのクシャナ殿下腹黒妄想は「ナポレオン覇道進撃」9巻での我等がタレーラン師匠の華麗なる?弁明に着想を得ていたりします。長谷川先生のナポレオン、本当に面白いですわー。
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   ×詩の森⇒○死の森
何故に突然詩を吟じるのか…
そりゃ確かに、冒頭でのナウシカのモノローグはポエットかもしれないけどさぁ…