まず一点目ですが、事の始まりはペジテの坑道で発見された巨神兵の「骨格」に、「秘石」を用いた(胎盤たる黒箱に鍵を嵌めた)結果、巨神兵の成長が始まった=生きている巨神兵の発見にありました。 
   「秘石」を胎盤から外すことで巨神兵の成長は止まりましたが、アスベルによれば、巨神兵を抹殺することは勿論、傷をつけることさえ叶いませんでした。このことから、ペジテとしては(劇場版と異なり)、巨神兵の復活は「阻止」したかったと考えられます。 
   こう考えれば、トルメキア側が巨神兵の「確保維持」に大して労力を割かない理由も見えてきます。「秘石」には巨神兵の制御ユニットという面もあるため、それ無しでは兵器としてまともに運用できないためです。 
   これに限らず、漫画版での巨神兵の軍事的扱いは「不完全な」厄介者であり、劇場版のような最終兵器・腐海焼却の「切り札」とは程遠いのですが、その分、列国の駆け引きの道具として描かれている点が面白いところですね。 
   昨日のわが社
偉い人「年末恒例の、社長による社内まわりですが…」
ワタシ(今年は流石に中止やろ…)
偉い人「密を避けるために、今日から3日に分けて行います」
あ ほ で す か 
   この点については、「森の人」セルムから瘴気=大地の毒を腐海が取り込む際に僅かに放出される毒の残欠であり、長期的には安定・無害化されると説明されます。 
   まあ実際には二百年近くかかるスパンの話であり、また短期的には瘴気により土中の毒は却って活性化されるようです。重要なのは瘴気はあくまで副産物・途中経過であり、それ自体が腐海の主目的では無いという点です。 
   次に問題となるのは蟲達の存在です。蟲は腐海の生態系の一部をなし、腐海に害なす存在(主にちょっかいを出す人間)を攻撃しますが、彼等ーことにその頂点たる王蟲ーが高度な知性を有するのは何故でしょうか?言い換えれば、何故こうした知性が「付与」されたのでしょうか? 
   その答えとしては本能に基づかない理性的行動としての自殺=大海嘯を蟲たちに起こさせるためではないかと考えられます。五巻において、大海嘯は王蟲の人間への怒りではなく、仲間たる粘菌を救うという、極めて人道(!)的・利他的理由に基づいていたことが明かされます。 
   一方、大海嘯は蟲たちには、森を離れ、瘴気のない世界を力尽きるまで走る、正に死出の旅であり、生物としての生存本能には真っ向反対する行為です。こうした行動を蟲に「起こさせる」には、実に厭らしい話ですが、「腐海を愛する」理性的・利他的な高度な知性が不可欠ではないでしょうか? 
   こう考えると、蟲達の「労りと友愛」、或いは劇場版ナウシカの「蟲達が世界を守っている」という言葉の裏に、旧世界の人間達の極めて残酷な意図が見えてきます。そう、彼等は世界浄化という自身の計画のために、蟲達の命をー更に言えばその心すらーいじくり回したわけです。 
   一方、腐海最深部=「青き清浄の地」との間には遷移帯が見られます。これは腐海が汚染地に対しては攻撃的・非共存的である一方、浄化世界に対しては非敵対ー寧ろ自然消滅に向かう傾向があることを可視化しているようで、なかなか面白いですね。