7巻終盤は更に悲惨で、ヴ王のシュワ奇襲に全く組織的抵抗ができず、雁首揃えて降伏しています。シュワ周辺は大海嘯の被害もなく、時間的猶予もあったにも関わらず、防衛戦力すら集められない時点で、僧会幹部の実効権力喪失は明らかでしょう。 
   そして墓所の権威と技術は、あくまで皇帝と墓所の取り決め・約束により僧会に付与されるものてあるため、事実上僧会の力は全てミラルパに由来するー裏を返せば僧会自体は空っぽで、帝国=ミラルパであったーと言えます。 
   このことを、恐らく誰よりも熟知していたのが皇兄ナムリスでした。即ち、彼は今際の際の弟に、自らの帝国を自身で切り取ると宣言すると共にこう告げるのです。「この墓穴(墓所)とクソ坊主ども(僧会)はお前にくれてやる」、と。 
   結局、土鬼帝国とは何処までもミラルパ個人の存在にかかっており、僧会もミラルパ無くしては機能せず、彼の死を以て事実上、土鬼帝国は崩壊したと言えるでしょう。兄ナムリスは、自分の帝国を築くという指向が強く、先代(弟)を継ぐという意識がかなり希薄で、帝国の消滅にすら他人事感が漂います。 
   【補論②】ミラルパは兄ナムリスと異なり、複製人への肉体移植を頑なに拒み、無理な延命措置を目指しますが、これには幼少時のトラウマ以外に、今の自分に付随するカリスマ・超常の力が移植で喪われるかもしれないという怖れ、また手術失敗=死による帝国瓦解への怖れもあったかもしれません。 
   (続き)更に言えば、墓所から余り離れないのも、肉体劣化阻止に加え、自分なしでは「クソ坊主ども」でしかない僧会の手綱をしっかり握っておかねばという危機感もあったかもしれません。有能すぎる独裁者の孤独、というやつでしょうか。 
   おお、特別メッセージが!
…でも、あれ?エンディングは!?Beautifulworldは?
#エヴァ序 
   そしてシュワに至る山地帯(聖なる谷)は年中降雪も著しい寒冷な場所なうえ、シュワ周辺は「錆びたセラミック片の砂、溶けた都市でできた岩山」からなる荒涼たる砂漠であり、豊かな食料生産など望むべくもありません。 
   では聖都シュワの人口はどうやって養っていたかといえば、これは恐らく諸侯国の位置する「中原」=シルが川とゴス山脈に挟まれた地域からの輸送でしょう。実際、粘菌発生地たるサパタ西部は穀倉地帯でもあったようです。 
   実際、基地に隣接するとおぼしきカボの「王都」はチラッと見える範囲でも二~三重の城壁を持つかなり大きな都城であり、腐海を越えてエフタルとも交易があったとすれば、かなり重要な交易拠点として栄えていたのではないかと思われます。 
   例えば4巻ではマニ族がシュワへの巨神兵回航を手伝わされていますし、7巻ではシュワについても何も見えないことに驚く≒シュワを見たことがある?人々も描かれています。 
   この説の傍証となるのが、クロトワさんの「血を分けた兄」言及、三王子からクシャナ母への「お前を生んだ女」発言(=クシャナ母は三王子母ではない)、何より自身謀殺の主犯について最初は「父」を除外していたクシャナ自身の態度になります(歌舞伎版では父主犯を知り、より激しく動揺します)。