→ページ数的には「中編」という感じですが、とにもかくにもギャグでない「連載」を無事やり遂げた作品となりました。ここで使った伝奇+自衛隊というモチーフはのちに『石神伝説』へと繋がっていくことになります(『山の音』解説・了)
『トマソンの罠』①「トマソンの罠」コミック'94春号
トマソンというのは赤瀬川原平さんが提唱したあの路上観察対象物件としての概念名であるトマソンです(単行本のタイトルに使用するにあたっては赤瀬川さんにお伺いをたててご許可をいただきました)。作中には当時筑摩書房の松田哲夫さんも登場→
→冒頭には90年代初頭の下北沢駅周りの風景が描かれており、小田急が地下へ潜ったいまとなっては貴重な記録かもしれません。後半に出てくる古いアパートは上京して初めて住んだ東北沢の風呂ナシ共同トイレのアパートがモデルですがいまは取り壊されていてありません。
『トマソンの罠』②「エリート」コミック'94初夏号
羽田空港前に昔建っていた鳥居とターミナルビル内に現存する航空神社の話は昔から興味があっていつか描いてみたいと思っていました。ストーリーはいま読むと諸星大二郎さんの影響が強く出ていますね(自分で指摘してる場合じゃないんですけど)
『トマソンの罠』③「鰐」コミック'94真夏号
実際に都内の池でワニだかワニガメだかが見つかって騒ぎになっていたのに触発され、ややコミカルなノリで描いてみました。作中の池は井の頭やら善福寺やら複数の公園の合体です。オジサン達の顔は昔の落語家さんをお遊びで使っています。
『トマソンの罠』⑤「雪の宿」コミック'94冬号
90年代の中頃は年越しをを青森県の谷地温泉で迎えることが多く建物や浴場のモデルにしています。どんど焼きと国生み神話を結びつけて描いていますが、もちろん現地にはそんな謂れはありません。カメラマンの顔はちょっと岸田森っぽいですね。
『トマソンの罠』⑥「帰郷」
コミック'95summer special
ページ数が短いのは他の仕事との兼ね合いでこちらからお願いした記憶。そのページ数から逆算してシンプルな話にしました。主に郷里の人吉の風景を使っていますが別の地方都市で撮った写真も参考にしています。このラジオ店は尾道市内のもの。
『トマソンの罠』⑦「石の声」コミック'95春号
お読みになればわかるとおり『石神伝説』の序章的な短編で描く前からその意識はありました。『石神伝説』本篇にも改稿の上収録しています。いちばん変わったのは真理ちゃんの顔で上が「石の声」版、下が『石神』版。
『パシパエーの宴』①「パシパエーの宴(うたげ)」
コミックバーガー増刊「黄金伝説」1991年
いわゆる“クダン”を扱った作品。私の場合個人的な興味や研究とマンガの仕事は必ずしも結びつかないのですが、これはクダン伝承探求とニュースウォッチャーという二つの趣味(趣味なのか?)が作品に反映→
→されています。いま読むと「怪しい宗教と政治の絡み」という現在進行形の問題にも触れています。牛頭獣身でもクダンなのか?との声もありますが、表紙カバーのような怪物は作中には出てきません。ただ、タイトルがパシパエーなのでここで描くのはミノタウルスタイプが順当であろうと思った次第。
『パシパエーの宴』③「カラオケボックス」
コミックモーニング1993年4/22号
レンタル店と同じころカラオケ店も街に増えていきつつありました。前者はサブスクの時代消えつつありますが後者は一大産業になっています。私自身は実はあんまりカラオケをやらないのでネームはやや悪意に満ちていますが→