【75年前の8月9日】「◉夕のラジオはソビエトがついに日本に対し交戦状態に入ったことを通告し、その空軍陸軍が満州進入を開始したと伝えた◉しかし鈍い。一般には十二月八日のような昂奮は認められない。予期せぬことではなかったこと。激情的な事実にも馴れっこになっていること」#風太郎不戦日記

76年前の昭和20年元日から、23歳医学生が書き綴った日記（7／8）

【75年前の8月18日】「大洋製作のおやじを訪ね、おやじ大いに悲憤す。『小せえ奴が大きい野郎と喧嘩するんだ。命をかけねえで何が出来る？　おらも苦しかったがこんな苦しみ方で勝てるなんてつゆ思っちゃあいなかった。負けるにしたって勝つにしたってこんな苦しみ方じゃ薬にも毒にもなりゃしねえ』」

【76年前の10月11日】「学生第一陣三十名余り帰京の途につくと見え、青筍寮の面々歩廊に赤き旗振りて校歌を唄い太鼓叩きて鼓舞放唱。珍らしきか群衆柵に寄りて見る。改札の美少女の片頬に哀愁の翳ふかし」 #不戦日記 #山田風太郎 #勝田文

【76年前の12月2日】「早朝高須さん（名古屋より）帰宅。東海道線の車中でトランク盗まれたりと。飯田より斎藤のおやじも帰京来訪。五合の配給酒のみつつ、横浜で貿易商をやると怪気焔をあげていたが、突然鮭の自由販売があると思い出して駈け出していったのは滑稽である」 #不戦日記 #山田風太郎

【75年前の7月19日】「『神勅』とは何か。これに懐疑を持つのは当然で、持たない方がどうかしている。ところが今の教育では頭からこれを絶対信仰せよという。そして絶対信仰している狂信者たちが指導者となり、国民はみんな絶対信仰しているような顔をしている。実に馬鹿馬鹿しい迷信だ」#不戦日記

【75年前の7月17日】「◉夜半零時、豪雨の中に警報。敵機相当数本土を北上中なりとラジオ聞ゆ。江知家の婆さんに依頼されあれば、雨の闇夜を江知家に駆けつける。ニヒリストも婆さんには到底腕立てが出来ない◉北陸を襲いたるB29、南方脱去の際、しばしば飯田上空を通過す。爆音凄し、雨声また凄し」

【76年前の11月1日】「一般に教養ある日本人が、終戦以来の連合軍司令部に心中快哉を叫ぶがごとく見ゆるは考うべき問題なり。余のごときはその命令が適切なればなるほど、それだけ癪に障ることおびただし。されど…だんだんとかかる新教育に馴致されゆくこととなるべし。実に残念無念なり」#不戦日記

【76年前の9月30日】「午後医談会なるもの飯田保健所にて開催さるるときき、寮生一同ゆく。鮮やかな午後なり（中略）スマートな白き米軍機二機、爆音高く町すれすれに旋回して去る。一時開催の予定がなかなか開かれず、余イヤになりて帰る」#不戦日記 #山田風太郎 #勝田文

生誕100年。23歳医学生の山田風太郎、昭和20年の日記（8／9）

生誕100年。23歳医学生の山田風太郎、昭和20年の日記（4／9）

生誕100年。23歳医学生の山田風太郎、昭和20年の日記（3／9）