本日は開館日です。宇和島市歴史資料館には「華宵の部屋」という展示スペースがあります。3ヵ月ごとに当館からの作品をテーマを設定して展示。現在は第33回「花の色は移りにけりな」展です。華宵作品といにしえの雅びな世界をご堪能下さい。
「自然と少年」というテーマで二人の画家の少年たちについて見てみたいと思いました。以下、展示の最後のコーナー「少年と自然ー古屋兎丸と高畠華宵の場合ー」の説明文です。
少し長いのですが、ぜひご一読いただければ嬉しいです。
そして展示室の少年たちに想いを馳せて頂ければ幸いです。↓
ライチを燃料とするロボットを作ります。
破壊的なリーダー・ゼラを中心に狂信的な集団となっていく少年たちの周りに自然はありません。自然から隔絶された少年たちの行く末は悲劇へとつながって行きます。
もちろん少年は自然を求めるだけではなく、↓
機械的なもの・科学的なもの(飛行機や船など)への関心は戦前の挿絵の中にも見られます。
戦後の小松崎茂などに代表されるような「空想科学」への傾倒は、少年の「非自然的なもの」への関心がある意味で普遍的なものであることを証明しています。↓
古屋兎丸版「スタンド・バイ・ミー」とも言える『少年たちのいるところ』では、夏休みの思い出作りに少年たちは工場の夜景を見に自転車を漕いで行きます。
少年と自然の関係は常に一定ではなく、時代によって変化していくものですが、華宵の「自然の中の少年」から古屋の「自然不在の中の少年」への↓
「『インノサン』の花は、暴力に侵食される少年たちの仲良しの世界、人と人との無垢なつながり、無垢を求めた少年たちの死への鎮魂などを重層的に表象する。古屋兎丸は花によって漫画という視覚表現の可能性を押し広げている」(「少年の世界への別れと鎮魂『インノサン少年十字軍』、ユリイカ)↓
つまり『ライチ☆光クラブ』で徹底的に自然を排除した古屋ですが、少年の心象を自然(花)を通して表現することで、少年と自然の深いつながりを示唆しているようにも感じられます。
『インノサン少年十字軍』で救いを求めるエティエンヌの恋心を蝶や花が代弁します。↓
絶望の中にある少年の束の間の癒しは自然の中でしか得られないのです。
一方で、『ライチ☆光クラブ』でクライマックスの儀式中、ゼラが息絶える最期の瞬間では黒い薔薇が効果的に使われています。
この黒い薔薇が表象するものについて、じっくりと考えてみたいのです。↓