「インスタ映え」だ、つって洗濯機に入ろうとする女は、ミキサー大帝のパワー分離機で骨だけ抜くパフォーマンスをカマすことで、よりインスタ映えさせる事ができる。
ジョージ秋山「告白」
71年。ジョージ秋山は時代の寵児であった。そんな氏が告白とも告解ともつかぬ、虚偽の入り交じった不可解な独白を連載し始める。告白した内容が次週には嘘だと覆され読者は困惑させられるが、それは逆に妙な生々しさを演出し、伝説となった最終回への大きな布石となる。
どしゃ降りの中、読者を騙し続け、自分を責め続けたジョージ秋山。最終回では断筆宣言のようなものものしい雰囲気に陥るが、突如自身の生み出したキャラに導かれて謎の解脱を果たす。騙され続けた読者はこの結末に唖然とするしかなかったことだろう。だが、これこそがジョージ秋山の「告白」なのだ。
ジョージ秋山「耳鳴りのする朝」
女はみんな淫売だ!というテーマで多くの信奉者を生んだ「日本列島蝦蟇蛙」シリーズ。本作は聖青年の回想と共に、少年期から現在までの性の原風景が語られる。ぶっちゃけ聖青年はジョージ秋山氏なのだが、それだけにここで語られる内容は赤裸々かつアバンギャルドだ。
後半、いとこの優子(中3)を預かってからの展開は「ジョージさんなにやってんすか!」と言うべき最高の内容だ。女を連れ込んであえぎ声をわざと聞かせたり、寝ているそばでオナニーしてみたり、エロ本を部屋に放って片付けさせる悪戯が読んでいてもワクワクさせられる。
川島のりかず「怨みの猫がこわい!」
「恐怖の黒い占い師」と同内容。アッパー系の発狂ホラーの印象が強い川島作品の中でも珍しいダウナーな発狂展開を見せる佳作。猫を誤って殺してしまった主人公達に訪れる不幸が描かれる。感覚的には刃物で切られるというよりも鈍器でぶん殴られる様な衝撃が近い。
友人の圭子が占い師の警告通り死んでしまったのを皮切りに、主人公・沙里は恐怖と妄執に取り憑かれ、供養の為懸命に石を磨き続ける。
現実逃避と被害妄想が生み出すパラノイア展開と全く救いのないラスト。本作はスカムホラーとしての川島作品に対して見方を変えうるカウンターとなる一作なのだ。
川島のりかず「生首が帰って来た」
嫉妬の果てに呪術の力を借りて相手を貶める所にホラー要素を発現させる本作。だが、川島のりかず作品である事を鑑みると、真価は味付けにあると気付かされるだろう。兄の婚約者にカラスをけしかける呪いをかけた時点でゴングは鳴らされ、泥沼の惨劇が今幕を開ける。
人を呪わば穴二つ。呪いをかけた者は報いを受けるというまともな教訓が本作でも窺えるが、それも多分気のせいだろうと思える程に、いつもの川島作品よろしく、発狂&目玉えぐりだし&首チョンパで締め括られる。タイトルで吟っている通り、生首が帰って来て幕。恐るべき逆読み感はやはり只者ではない。
川島のりかず「母さんが抱いた生首」
表紙からの逆読み感、という謎ジャンルでは第一人者というべき(後続はいない)氏の傑作。本作はあくまでもスカムホラーとして傑作であって物語はかなり乱暴に組み立てられており、説明不足がとにかく凄まじい。理屈よりもパワーを重視した重ホラーと呼称したい。
所々設定を補う様にモノローグが挿入され「今考えたよねこれ」といわざるを得ない展開がとにかく多いのだが、無視して流れるままに読み進めていくといつの間にか"母さんが生首を抱いて"物語が終わっている事に気付く。
どんな本でも最後まで読ませたら勝ちなんだ!というパワーがとても強い一作。