まず改めて「森の人」についてまとめると、彼等はほぼ腐海の中で自給自足し、「腐海の一部」と化しています。火すら捨てたその超越的生き方は、外界との交易ー及び交易と不可分化した蔑視ーに依存する蟲使い達からは畏敬の目で見られています。

「判断が遅い」 …というより、流石にここ迄タイミングズレていると、「実行した責任負いたくないから、わざと手遅れのタイミングで「こっちは譲歩してやったのに」というアリバイ作ろうとしている」ようにしか見えませんよ？ https://t.co/oFcFhRin24

アスベルは「ナウシカが皆を繋ぐ糸」だと喩えましたが、その輪の中に蟲使いもまた入ります。彼等は「友人」ナウシカを通じ文字通り世界ー風の谷やトルメキアや土鬼の人々ーとも「友人」として繋がったわけですね。

勿論、「友達」になっても全てを理解し合えるわけではありません。死者への接し方のように、どうしても根っこで分かり合えない部分があります(蟲使い達が死者の物を盗まないと約束したのは、死者への敬意ではなくあくまで「ナウシカが悲しむから」）。それでもなお、分かち合い繋がることは出来る。

ナウシカを女神様＝新たな世界からの祝福として信仰していた彼らにとり、これは更なる衝撃となったでしょう。神／祝福が、自分たちと同じ目線で「友達」と親しく語りかけ、握手抱擁してくれたのですから。それは俗っぽく言えば「世界からの包摂」を実感できた瞬間だったのではないでしょうか。

そのきっかけはやはり、ナウシカとの「出会い」でしょう。「女神様」の前で恐縮しきりの蟲使い達に対し、ナウシカは「人間として」友人になろうと語りかけ、マスクを外し素顔を求め、恐縮な体臭(婉曲表現）をものともせず彼らと握手抱擁を交わします。

そして蟲使いは叫びます。「神を持たぬ苦しみの日々に終わりが来たのか」と。それは裏返せば、それまでの日々において彼等には神がー神の祝福を実感する機会がー無かったことを意味します。やはり先に見た荒んだ世界観は、彼ら自身にも馴れることはなく辛いものだったのです。

そんな中、大海嘯を王蟲の漿液に守られてー但し心は虚無に呑まれ彷徨うーナウシカが、森の人セルムにより救出され、蟲使い達の元に齎されます。「新たな森から生まれた」が如きナウシカは、その美貌も相まって、蟲使い達から自分達の女神として歓迎されます。

そんな彼らがナウシカと出会ったのは、土鬼大海嘯の後、新たな腐海が生まれる時でした。この時彼らは新たな腐海＝新たな自分たちの世界の誕生に歓喜雀躍していました。

そんな境遇を反映してか、彼らの心性は中々に酷薄ものがあり、卑屈で金にガメつい反面、立場が有利と見るや居丈高になります。また、その酷薄さは身内にも及び、兄弟で敵味方に別れることにも割とあっけらかんとしています。

ナウシカ世界において、蟲使い達の置かれた環境は過酷です。自らの国を持たず、腐海の中を彷徨いながら外界との交易で生計を立て、外界の定住民からは穢れた蟲を使役する賤民と蔑まれる…

今宵の漫画版 #ナウシカ 考察は蟲使いの信仰・心性について、特に何故彼等がナウシカを女神と崇め心酔したかを考えてみたいと思います。キーワードは、「賤民としての立ち位置」と「ナウシカを通じた世界からの受容」です。