ここで改めて7巻での墓所の主張(建前)を振り返ると、「世界は浄化の過程にあり、墓所がその核である。浄化の日までは墓所は世俗の庇護が必要である」というものになります。
そして「彼」は「人間を救いたい」という理想に燃えて、圧政と狂気を敷く「悪の」クルバルカ王朝を打倒します。まるで、暴君ナムリスを打倒せんとする、いま目の前にいる少女(ナウシカ)と同じように。
更に、ナウシカは若き頃のナムリス・ミラルパの父=初代神聖皇帝にもよく似ていたとされます。実際、その後7巻では、ナウシカは「彼」をなぞる様に庭園を抜け出し、お供を連れてシュワへ赴きます。
まず、ナウシカとの対峙がナムリスに齎した「絶望」についてです。彼曰く、ナムリスと対峙するナウシカは若い頃の弟ミラルパにー民の安寧を心底願う慈悲深い本物の名君ーにそっくりでした。
もう一つ、上記の点にも関わりますがナムリスをして生き飽きさせてしまった「墓所の主のいう通り」とは結局どういう意味だったのでしょうか?ナムリスの言を借りれば「墓所に行けば解る」のですが、実のところ墓所編でもこの点は明示されていません(ヒントになりそうな点は色々ありますが…)?
ナムリスは弟ミラルパ統治の百年を肉体崩壊のリスクすらある「数十回の手術」の恐怖に耐えて乗り越え、土鬼大海嘯による混乱という僅かな隙を突いて実権を奪取、ほぼ徒手空拳で表舞台に踊り出した「忍従の人」です。そんな彼が、たかが首一つになったくらい(!)で「生き飽きて」しまうのでしょうか。
ヴァイオレット・エヴァーガーデンの代筆業で思い出すのが「パンプキン・シザーズ」中の「ジャガーノート」の逸話ですね。電信が発達した世界で代筆屋が見た、「代筆に特別な意味が与えられた、しかし「手紙しかない世界」が滅びる世界の物語」。
更に今回、トドメに足利尊氏公から「大乱さえ起きなければ自分は忠臣として終えられるであろう」発言が出るに至っては、「観応の擾乱」読者としては非常にグッとくるものがあります。ここはまた、亀田先生の感想も気になるところ(?)ですね。
今週の #逃げ上手の若君 、後の室町幕府について「鎌倉幕府と建武親政の長所を受け継ぐ」の台詞が出てきておおっとなる。しかもこの台詞を高師直に言わせる辺りが実に心憎い。願わくばこのまま観応の擾乱まで描き切ってほしい…!(主人公がアレするのでそこまで描かれるかといえばその…)
今週の #逃げ上手の若君 、時行君の正体に確証を得られない小笠原貞宗公が時行君を「見逃す」のには、乱世ならではの慎重さ(どう転ぶか判らないときに迂闊に手を出さない)が感じられましたね。そして、すっかり定着した感のある乱世的「ポロリ」(笑)。
今週の #逃げ上手の若君 は小笠原貞宗公と時行君の対決再び。が、戦は刃を交えるのみならず。口舌の刃を交わす様も、互いの知力を尽くす熱さがあり面白い。それにしても智勇兼備の小笠原公、実に強敵である。そしてそれに伍していく時行君もまた、既にして王者の貫禄…!