さて、こうした墓所に対し、ナウシカは反駁します。「滅び/失敗を私達は抱えながら、試行錯誤して今を精一杯生きる。墓所の定めた未来には縛られない」と。これに対しヴ王は「小気味よい」と強く賛同し、「自分の運命は自分で決める」と墓所に啖呵を切ります(この辺りは歌舞伎版もかっこよかった…)
だからこそ歴代皇帝は墓所を「封印」してその影響力を極限しようとしたのであり、またミラルパは皇帝/僧会主導の「勝利」を演出すべく、その封印を解いて腐海の軍事利用に踏み切ったわけです…その結果は「ご覧の有り様だよ」なわけですが…
ヴ王にとり、墓所はあくまで「奇跡の技」やその成果を得る場所に過ぎず、人造物たる墓所の主に王に「選ばれる」ー或いはその見返りに奇跡の技を「恵んでもらう」などというのは屈辱、筋違いな扱いもいいところでしょう。
即ち、王は墓所中心に着くや激昂して「教団」幹部を攻撃し、不死の業やヒドラを下らないとばかりに撥ね付けます。…が、もともとヴ王はこれら「旧世界由来の奇跡/悪魔の業」を求めて墓所へ来たのではなかったでしょうか?
墓所でのヴ王の最期を考えるには、まず彼の墓所行きの「目的」をお復習する必要があります。それは、王の言葉を借りれば「墓所の秘密を掴む」ことであり、トルメキア戦役の抑々の目的もそこにありました。…しかしその場合、ヴ王の墓所での言動には些か奇妙な点が出てきます。
さて、今宵の漫画版 #ナウシカ 考察は「王の最期」編の掉尾を飾る題として、ヴ王の最期ー「なぜナウシカを庇ったのか」について考えてみたいと思います。が、この問題、紐解いてみると中々複雑なので、何回かに分けることになりそうです…
◎あなたのサークル「異端審問官城」は金曜日 西地区”け”ブロック―30aに配置されました。
というわけで、2年ぶりの聖地有明巡礼が叶いそうです!新刊は既に印刷所を出て手元に向かいつつありますので、皆様お楽しみに♪
コミケ99当落のメール設定と、あとWEBカタログの追記もしてきました。明日が当落発表なので危ないところでしたね…。というわけで当落報告用の自作コラ画像を置いておきますので、ご自由にお使いくださいませ。
#コミケ99
しかし同時に(ナムリスとは違い)「土民の平安を心底案じて」百年に亘り統治してきたミラルパにとっては、自分の統治が全くの無駄ではないー現に目の前に存在する楽園にいつかは辿り着く、その道程という確信 /救済にもなったのではないでしょうか。
そうしてミラルパはナウシカの内なる「豊かな森」でその住民(ナウシカ自身の分身?)から、文字通り「心からの歓待」を受け、すっかり童心に返ります。これもまた、「愚かなままの土民に絶望」し、恐怖と虚無の黒衣を纏うに至ったミラルパには、久しく味わえなかった「人の心の美しさ」でした。
そうして二人は闇の荒野から光溢れる腐海(!)に辿り着きます。その森は現実の腐海にナウシカの精神を導くための、彼女の「内なる心の森」でした。そしてナウシカはミラルパをこの森に連れ込みます。この森が自分の心ならあの虚無もーその虚無に取りついた亡霊もー内なる自分であるとして。