「精霊よびだしうでわ」に代表されるように「春の訪れと別れ」をテーマにした話がドラえもんには多いけれど、その中でも「タンポポ空を行く」は、タンポポの子供の旅立ちを通じてのび太の成長も感じることができるという、大人になって読むとさらに味わい深くなる名作ですね。ぜひ読んで頂きたい
「正義のパトカー」はジャイアンがパトカーを壊してめでたしめでたしなんだけど、オチのコマの「ジャイアンは正義の味方だ」というセリフに、当初の正義と悪の関係が転倒しているおかしさと、F先生の正義についての思想が込められている。これが小学二年生に掲載されていたというのも凄い話だ
過剰な正義はやがて加速して歯止めが効かなくなっていくということを、F先生は分かっていたのだ。その一例が「悪者は絶対に許さない正しいつる草」が些細なウソにも罰を与え、町をパニックに陥らせる「おそるべき正義のロープ」の回ですね
来週のスペシャルはF先生のSF愛とパロディ趣味がモロに反映された名作「天井うらの宇宙戦争」が放送されるぞ。この短編が元になって映画「のび太の宇宙小戦争」が制作されたんだよね、という話をこれから8時間ほどしたいのですが……
子供の頃よく見た「いつの間にか街中で素っ裸になっていて、焦りと恥ずかしさでパニックになりながら人に見つからないように家まで帰る夢」を今でもたまに見るんだけど、これは絶対に昔大みそかだよドラえもんで見た「タイムシーバー」(原作は「古どうぐきょう走」)のこのシーンが原因だと思う
ドラえもんの「自信ぐらつ機」、子供の頃読んだ時凄く怖くて、特に最後の「自信をなくしたドラえもんが未来に帰ろうとする」というギャグっぽい終わり方も全然笑えずむしろゾッとしたんだけど、今思うとこれは人が鬱になる過程そのもので、言葉にはできないもののそこに本能的な恐怖を感じたんだな
おじさん構文が人間の脳に深刻なダメージを与えるのは確かなんだけど、しかしかと言って「ボクは若者の気持ちを“理解”してるんだよねおじさん」もそれはそれで非常に迷惑なので、歳を取ったらこれになるしかないのかなと半ば諦めの境地に立ってる
この話の主軸である道具「ファンタグラス」は動物や植物の声が聞こえるものなのだけれど、実はそれはのび太が心の底で思っていることであるという点がキモで、作中のタンポポからのび太や子供へ向けられている言葉も、実はのび太自身の自問だったという所が、この話の名作たるゆえんですね