『トマソンの罠』②「エリート」コミック'94初夏号
羽田空港前に昔建っていた鳥居とターミナルビル内に現存する航空神社の話は昔から興味があっていつか描いてみたいと思っていました。ストーリーはいま読むと諸星大二郎さんの影響が強く出ていますね(自分で指摘してる場合じゃないんですけど)
→冒頭には90年代初頭の下北沢駅周りの風景が描かれており、小田急が地下へ潜ったいまとなっては貴重な記録かもしれません。後半に出てくる古いアパートは上京して初めて住んだ東北沢の風呂ナシ共同トイレのアパートがモデルですがいまは取り壊されていてありません。
『トマソンの罠』①「トマソンの罠」コミック'94春号
トマソンというのは赤瀬川原平さんが提唱したあの路上観察対象物件としての概念名であるトマソンです(単行本のタイトルに使用するにあたっては赤瀬川さんにお伺いをたててご許可をいただきました)。作中には当時筑摩書房の松田哲夫さんも登場→
→ページ数的には「中編」という感じですが、とにもかくにもギャグでない「連載」を無事やり遂げた作品となりました。ここで使った伝奇+自衛隊というモチーフはのちに『石神伝説』へと繋がっていくことになります(『山の音』解説・了)
→ひねくれ者の私は全然違う方向に舵を切りたかったのです(商売下手といわれましたが)。SFはやっぱり自分のバックボーンですからね。伝奇物にしたのは田舎育ちの自分の経験が活かせる身の丈に合った題材として。ただし漠然と南九州を舞台にしてはいますが現実の故郷の風景はあまり使っていません→
『山の音』⑤「憑かれた男」SFマガジン1987年1月臨時増刊号
ステディという個人端末AIは堀晃さんの短編の影響だったかな。いずれにしてもこのころの洋邦SF作品には似たような小道具が登場し始めていたと思います。いまのスマホがまさにそうですね。脇役をハリウッド俳優の顔にして遊んでます。
『山の音』④「隣の女」SFマガジン1987年7月臨時増刊号
しばらく甘い話が続いたので方向転換……というわけではなく、この増刊がホラー特集号だったのでその依頼に合わせた形です。ホラー作品で影響を受けたマンガ家は?と質問されることがあるのですが、自分ではホラー物や伝奇物はマンガよりも→
『山の音』③「羽根の塔」SFマガジン12月臨時増刊号
原作なしで描くようになってからは逆に「自分が恥ずかしさでのたうちまわるくらいのラヴストーリーを描こう。これも修行だ」と思って描いてました。惑星環境や宇宙植物の設定には亡くなった鹿野司さんの協力がありました。あらためて感謝致します。
『山の音』②「カットバック」SFマガジン85年2月号
「銀クジ」は幸い評判がよくSFマガジンからも読み切り短編の依頼が来ることに。当時の私は皆様よくご承知のように時をかけたりする映画にとち狂っておりましたので、この作品ももろにその傾向が出ています。舞台は自分の故郷をモデルにしています。
『山の音』①「銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ」
収録順では最後になりますがこの作品が“ギャグでない”SFを描いた最初の作品です。初出は1983年「少年少女SFマンガ競作大全集」。実はチャンピオン応募時にギャグとSFの両方を描こうとしたのですが、後者は内容に画力が全然追いつきませんでした→
そんな恐ろしいことをいわないように。間違いなく宇宙人の死体だと思います(ACT42「ちょっと貧しいイイ話Part3」) https://t.co/pek4WCuIYw