執筆活動も学校生活も父によってもたらされる作家たちとの付き合いも、社交的に振るまい全てそつなくこなしながら、代わりに誰にも本心を見せなかったリカが、天才・響を前に負けたくないと心の底から願い、あがき、悶える姿が胸をうちます。
柳本光晴先生『響 〜小説家になる方法〜』のリカ先輩が見せる、天才を前にして傷つきながらも戦い続け秀才の姿が素敵。
日本を代表する純文学作家の祖父江秋人を父に持ち、自身も編集に目をかけられ作家の卵として執筆活動に励むリカですが、主人公・響という天才を前に打ちのめされます。
「そこに辿り着くことはできるのか」という答えを出すことが難しいぐるぐるとした日々を、言葉を交わしながら乗り越え続けた二人がどういう結末を迎えるかは、ぜひ本書を読んで確かめてほしいです。
三浦しをん先生が述べるところの言葉を尽くして縁を繋いで行く女の人同士の関係性。
"再生"はたすくだけではなく談話室に集うメンバーの共通のテーマであり、それは春と早輝の社会人百合カップルにも当てはまります。
壊れてしまった関係を繋ぎ直していつか結婚式を挙げる、というのが『しまなみ誰そ彼』における春と早輝の物語。
「誰かさん」に誘われ「談話室」へと通うようになったたすくは、集まる人々との触れ合いを通して自分を理解し、そして周囲と繋がっていく。
というお話。
「談話室」に集まる人々が空き家再生事業に携わるNPOのメンバーということもあり個人的には"再生"というのがテーマの一つにあるかと思います。
来週19日(月)の百合文壇バーはフィールヤング発の百合特集。
というわけで南Q太先生『スロウ』を。
この作品で描かれる元カノ同士の向き合わない描写が好きです。
もう恋人ではないが心のどこかに常にいる相手のことを、二人とも背中越しに感じている構図。
作中に出てくる
「だーら、あーし…捨ててきた」
「誰と居ても独りぼっちになっちゃうあーたが、何に耐えてきたのか、理解するために」
という好きな女の子を理解するために全てを捨てた女の子の台詞に関係を繋ぎ直すエモさが爆発していてとても素敵です。
暴力の絶えない家庭に育ち、やがて怪我により陸上という唯一の寄る辺さえ失う孤独なメガネさんと、彼女に熱烈な恋をしていたレズさん。
レズさんからの好意を自覚しながらもそれには応えず、代わりに忘れがたい縁で繋がったメガネさんはやがて家庭に入り、そこでも壮絶なDVを受けます。
体だけでは心は通じ合わず、触れたところから全てが流れ込んでしまえばいいというジレンマを抱えながらも
「セックスにそんな力はないことを知っている」
女の子たちがなんとか"心"を繋ぎたいという、肉体描写があるからこそ描ける心の描写に溢れていてとても感動してしまいます。
横槍メンゴ先生『レトルトパウチ!』のテーマの一つに「心」と「体」というのがあって、それは作中の
「私たちは他の誰にもわからない自分だけの体と心で出来ている」
という言葉で端的に表現されていると思うのですが。
横槍メンゴ先生『レトルトパウチ!』
性行為を持った相手に対して性的な興味を失うゼノフィリアのめばえとリカが最後の機会になると思いながら体を合わせた翌朝の描写。
「なに泣いてんのよ」
「こっちきてよ…寒いでしょ」
という言葉から二人の想いが消えずに残っていることがわかり凄くエモい。
昨晩の百合文壇バーにて横槍メンゴ先生『レトルトパウチ!』を紹介しました。
少子化により存続の危機を迎えた人間が、子孫を残すため誰とでも性行為を行えるよう恋愛感情を失い始める近未来。
一度性行為をした人が相手では喜びを見いだせない=多くの子孫を残せる新しい人間・ゼノフィリアが出現。