よく考えたらただの高校のテニス部の先輩なのである。世界一強いとかそういうキャラクターでは全くない。現にひろみに抜かされる。んでこの気概よ。気高さよ。こんな人間どこに存在するんだ。ここにいる。これが昭和の少女漫画だ。精神性だけ異次元の高みにいる。人間それくらいのことはできる。
関係ないけど森田まさのりは昔から凄まじく絵がうまい。既にあるものを上手く描くのは当たり前なんだけど、「学生服」というものをこのようにベタとトーンで、特に自分の頭部の落とす影を黒くベタで塗ってカッコよく描くというのに心底ビックリした。学生服の描き方の常識を変えたと思う。
ひるがえって令和の今、スネ夫の嫌味さ加減を表現できるかと言えば難しい。この姿の根底には一億総中流の時代がある。一応は中流を装いつつ、そこに見え隠れさせる裕福さこそが嫌味なのであって、今なら単に「ああ上級だ」で終わりになってしまう。格差によってスネ夫の嫌味が成金に紛れ宙に浮くのだ。
多分こういうのはアシスタントが描くのである。んでアシスタントとしてこの絵描かされたら結構大変であろう。角度を変えた注射器がずらっと液面に浸かっている。しゃぶしゃぶ鍋に雲形定規でタッチを入れるのも面倒だ。んで百人が百人とも読み飛ばす絵である。かわいそうだからまじまじと見ている。