SMは精神のもの。というのは真であるが、精神に頼りすぎて肉体が軽視されている場面によく出会う。だが「己より己の肉体を知り尽くしている人」でなければ、どうして精神を開けるだろう。月野定規先生『♭37℃』は、肉体を知り尽くす支配者としてのSを、この上なく丁寧に、かつポップに描いた長編傑作

仲直りセックスとかいうものを現実で行うのほんとに無理なんだけど上村一夫先生と解釈一致すぎてヤヴァイ。ヤヴァイ。好きすぎるかも上村一夫先生。

よい指導者とは「相手の限界を言葉を介さず見極め、広げる者」じゃないだろうか。我々変態は、「同意」をとる安全よりも、言葉によらないコミュニケーションを探りたい。調教する側の絶え間ない相手への観察・調整に、「指導」にも「質」があるのだと感じる『女×写真部とおじさん指導員』、良作。

展開・行為事態が酷いわけではないのに、最もメンタルに来るという理由で大好きなのがCuvie先生作品なのですが、理由わかった。竿役の一挙手一投足何気ない一言すべてが、ヒロインに、「生理的嫌悪感を与えてる」描写が丁寧かつリアルすぎる。その上でその男と致すわけだから、これこそ真のマゾ漫画…

誰もがオンリーワンが錯覚だと知っている。運命に思えた恋人も、自分自身の存在でさえ。だからこそ、一夫一婦制に縋りたい。秩序がなければうつろう心を止められず、「暫定一位」の恐怖に囚われる。桂あいり先生『コウカン』は、「たったひとつ」の幻想から覚めた世界を描く長編傑作。

「ハ×撮り」って成年漫画にはいとも簡単にでてくるけど、実際伴うリスクがデカすぎて割と集中できなくなりがち要素だと思ってるのですが、昼寝先生『しばられサーヤ』、その危うさ・リスクをこれ以上なく最高に活かしていて、エロに全集中させてくれるの本当に安心信頼のクオリティで大好き…

今回10円セールハマるの少ないと思ってたら最後の最後にキた。リビドー直結型エロ漫画家のヒロインが原稿終わるとスケベになる話『はーとまーく多め。』、エロ漫画読者にこそ響く表現を使ったセンス良すぎタイトルに字体のこだわり、何より「参考にする」を建前にエロに貪欲な姿に共感しまくりだった…

「エロ漫画芸人」で紹介されてて買った昼寝先生『一昼夜』、大優勝すぎ。こだわりの表現、独自の視点、選び抜かれた辱めの言葉が丁寧に込められたそれはまさに「作品」と呼ぶに相応しく、マンネリはない。擬音と体液の密度100%の頁は、繰るたび煙となって読者を包み込む。これは読む催淫。危険すぎる

「実践的であることと実践することは違う」って大学の友達の言葉を創作の世界に繋げたい。エロ漫画の中の酷いことは、実践可能だけど、実践することに結びつくわけじゃない。だからどうか創作の世界はいつまでも「配慮なき世界｣であってほしいな、と性的い○めエ■漫画の良作見つけて思ふ年の瀬

全ての個性を認める社会で、アブノーマルはいつか消え去るかもしれないけれど、インモラルだけはずっと消えない。リョナも平気で読んでいられる私が唯一感情移入してしまうCuvie先生の作品にはそういう「モラルを侵す」緊張感が細やかに張り巡らされているのか…と遂に理解した聖なる夜となった。

実は「社会が変態に優しくなりますように」なんて少しも思ってない。だって何でも許す世界には「倒錯」という形の官能がなくなってしまう。禁忌だからこそより惹かれてしまう人間の業を、どんな社会でもきっと常に「倒錯」であり続ける親子の性関係によって炙り出す緑のルーペ先生の倒錯世界は至高

｢群青｣｢青春｣などといわれると、解釈の不一致をすぐに疑ってしまうひねくれものなのですが、爽やかな表紙とうらはらに、｢学校中の男に抱かれるあの子を好きになってしまった｣というドロドロ展開を見せられるとさすがに、それよそれ、青春って…となってしまわざるをえない。美しい景色は地獄だね