間久部緑郎の知的美形悪役イメージの発展系であったのが、『MW』(ムウ)の主人公である結城美知夫だ。
ロックよりも冷酷な嗜虐心を持つ結城は人間の裏表の恐ろしさを如実に見せる。
自己破滅型な性格や同性愛にまで踏み込んだ描写等、手塚悪役の中では最も退廃的な耽美性を極めたキャラクターだろう。
永井豪による漫画『デビルマン』に登場した飛鳥了もまた、美形悪役として早い段階での特徴が見られる。
主人公、不動明の親友であり宿敵デーモン撲滅の為の協力者だったが、その正体はデーモンを率いる神である大魔神サタンだ。
両性具有という設定と、明に対する執着は退廃的なロマンス要素を見せる。
90年代少女漫画の大家CLAMPは様々なイケメンキャラクターを描いてきた。
その中でも最も強烈な後味を残した美形悪役が『東京BABYLON』に登場する桜塚星史郎だ。
物語の程において主人公、皇昴流とは敵対する関係では無いが、妖しさのフラグを回収した終盤、その虚無的とも言える冷酷さを露にする。
中性的な外見を持つ昴流からすれば、星史郎というキャラクターは包容力のある王子様の様な存在だ。
献身的なアプローチを受けて昴流は段々と星史郎に惹かれていくが、星史郎にとって昴流との関係や思い出は、自身が他者に対して執着感情を抱くかを試す為の過程実験でしかなかった。
その価値に値しないと判断した星史郎は、大きな犠牲と爪痕を残し昴流の元を去る
どちらにしろ他者との関係性を試そうとする時点で、心は他者を求める事の裏返しでしかない
最終話、霊視した少女の霊が語る「悪いことをする人はみんな『寂しい』のかもしれないね」の言葉は普遍的な真理として深く刺さる
「ライバルキャラ」とは実に面白い区分けをされたキャラクター表現だ
敵対はすれども完全なる敵=悪役とは違い、主人公と身近に感じられる等身大の描き方をされた"好敵手"といった別名でも呼ばれる
そんなライバルキャラの紀元と成り立ちの歴史を、様々なジャンルから一旦整理してみようと思い立った