回想は物語の進行を逆行させる表現なので、ドラマが停滞する畏れがあり、扱いが難しい。しかし手塚のこの工夫により、回想しながら現実時間を進行させ、ドラマ進行を停滞させずに最初のクライマックス(老婆殺し)を描くことが可能になった。 
   これが石原慎太郎の直筆生原稿だ! 活字や写植の時代には、石原慎太郎の原稿を読んで活字を拾う「慎太郎係」という活版職人や写植屋がいたらしい。よくこの字で作家デビューできたものだ。 
   「古代史ミステリーに挑戦!ついに邪馬台国の謎に終止符!証拠続出!歴史の空白は《富山県・氷見》が埋めた!」 
   夢特有の、「話が本筋からどんどんずれていくもどかしい感じ」を表現するのは、つげ義春が天才的にうまい。『ねじ式』もいいが、「話のねじれ感」では『ヨシボーの犯罪』が最高だ。