そう、やりすぎ。これは腐海の地下空洞についても言えます。実際、ここは毒もなく「清浄」なのですが、草木も生えない無の世界で、どうやって「庭園」がここを土生まれ緑溢れる世界にしたのかが謎なくらいです。
勿論、瘴気と蟲なかりせば、今度は腐海の存在そのもの、即ち既存の生態系と全く異なる「異世界」が人間世界を圧倒しようとする事実そのものが問題となります。要するに、「自律した巨大な生態系」自体が人間世界にとって脅威となるわけです。
まず「瘴気」の存在です。これは浄化過程での「副産物」に過ぎないのですが、人や動植物を即死させる猛毒で、人々が腐海を恐れ警戒する最大の理由になっています。これは同時に、「腐海を破壊する」動機になりうる点では腐海にとって危険でもあります。
そればかりか、自身の力の誇示として浄化計画の秘密の一端を自ら明かす始末で、秘密保持という点では失格です。事実、ナウシカはもとよりヴ王やユパにまで黒幕と喝破され、結局はそれが命とりとなり墓所は破壊されてしまいます。
逆に一番「不完全」なのが墓所にはなります。何せシュワの地にこれでもかと威容を誇り、土鬼歴代王朝を侍らせ、超技術をエサに彼らを操らなければ目的=計画監視と人類への干渉をなし得ないのですから。
これらは一見、いずれも「完璧な計画の産物」に見えますが実はその「出来」には大きな差があります。まず、一番完璧なのは「庭園」です。外界から完全に遮断され、かつ外界の支援なしに自律して秘密裏に目的(浄化世界のための種子保存)遂行が可能だからです。
まず、腐海を含む作中での環境浄化システムの「分担」を整理すると以下のようになります。
腐海:有毒物質の無害化、大地清浄化
庭園:浄化世界に伝える種子・遺産の保存
墓所:浄化過程の監視、人類への干渉