そして彼女(とアスベル)の本編で語られざる見せ場、マニ族説得編です。ユパ達と別れ、アスベルと二人で土鬼難民宿営地に潜り込んだケチャ達は遂に古巣マニ族の説得に成功、土壇場で皇兄ナムリスに反旗を翻させることに成功します。
一方、ナウシカについては少し微妙な態度が残るように見える場面があります。アスベル達と違い、彼女がナウシカと殆ど同行していないこともありますが、やはり「ここにいる自分(達)」を脇においてナウシカが話題の中心になるのは、何となくモヤモヤするのかもしれません。
このことは、5巻冒頭、ミラルパ重篤時の土鬼帝国から逆説的に明らかになります。即ち、ミラルパが人事不省に陥るや僧会は烏合の衆となり何ら政策決定を出来ず、易易とナムリスによる簒奪、更にはヴ王による都シュワ攻略すら許す為体です。そりゃヴ王も呆れる訳ですわ…
最終的にクシャナはユパの身を挺した「復讐連鎖の打ち止め」「新たな指針たる王道の提示」でこの迷走≒虚無から抜け出しますが、遂に虚無に呑まれたのが土鬼皇帝ミラルパでした。彼は息も絶え絶えに側近チヤルカに吐露します。愚民達は自分が放つ恐怖で縛り付けねばバラバラになり崩壊すると。
シュワの墓所の「秘密」=旧世界の超技術の存在を知るヴ王は、追い詰められた土鬼軍が何等かの超技術を投入し、どこかで総反攻に転じることを恐らく読んでいました。そして「その時」こそが王の狙い目でした。即ち、がら空きになった土鬼本陣=シュワの急襲で、正に終盤で王が採った作戦でした。