これは、土鬼皇帝にとっては絶対に秘匿したい「真実」でした。ただでさえ向背恒ならぬ諸部族がそれを知れば、オンボロ神輿は放り出せ!とばかりに皇帝に反旗を翻し、墓所を祭り上げようとする(そして墓所も特にそれに反対しない)のが明白だからです。 
   因みにこちら↓が実際の「墓所」ですが、サイズが若干大きい以外は、外観は周辺建築と然程変わりません。また、チラ見する限りですが、墓所周辺の広場(?)も然程巨大ではなく、街路の軸も墓所を中心とするとまでは言いにくそうです。 
   即ち7巻末、墓所との死闘から生還したナウシカは、墓の体液で王蟲の血より青く染まった衣を纏い、黄昏に照らされ金色に輝く聖都シュワの跡地に降り立ちます。彼女の周りでは蟲使い達が再生の舞を踊り、その光景に(恐らく)チヤルカ達は「伝説の再現」を垣間見ているのです。 
   ここまで徹底していると、シュワの街は墓所を模していると同時に、否それ以上に墓所を都の中に埋没/相対化させようとしていると言えます。シュワがこの墓所を囲む都であることは国外でも周知の事実であるにも関わらず、土鬼王権は何故そのようなミヤコづくり≒国づくりを行ったのか? 
   ところがどっこい、対地攻撃は中々に強力で、籠城中の第三軍への総攻撃は圧巻でした。実際、艦全体を見れば明らかですが、対地用の艦下部砲塔は上部・側面砲塔と比べ圧倒的に巨大であり、浮砲台の「主敵」が下方/地上にあることを如実に示しています。 
   というのも、実はここで生前のミラルパの苦悩・執着の元は何一つ解決していないからです。彼が心血を注いだ帝国は大海嘯で消滅し、土民は教化の甲斐無く「邪教」に回帰し、「青き衣の者」ナウシカを救世主と崇める…結局ミラルパ終生の事業は、彼の苦悩ごと全て否定されてしまったのです。 
   土鬼僧会の大きな目的の一つに、「邪教」=土着信仰の払拭があります。とりわけ救世主信仰である「青き衣の者」信仰は、これを旗印にした反乱を引き起こしかねないため、その払拭・民衆教化が重視されました。 
   それは墓所/帝国の境目を曖昧にするためではないかと考えられます。即ち、実態としての土鬼帝国は墓所の承認/庇護を受けた土鬼皇帝が、自身のカリスマ=超常の力と、墓所から提供されたテクノロジーという「暴力装置」(を行使する僧会)により支配するものでした。即ち、真の主人は「墓所」なのです。