一方、「白い翼の使徒」は漫画版独自の信仰であり、メーヴェに乗るナウシカを見たチククが彼女を準えます。こちらはその造形的には天使ですが、チククによればあくまで「人」であり、翼は象徴・イマジナリーのようです。
では三皇子の第二軍+第三軍編入部隊はどうか。恐らくヴ王はこの軍では不十分で、いずれ土鬼軍の反撃を受けると予想していたと思われます。事実、三巻冒頭でクロトワが広げていた地図では、大海嘯以前の時点にも拘わらず、トルメキア軍は既にナウリム川以東に後退しています。
母にとって娘たる自分は存在しないかもしれないー自分を見てくれないーというのは中々辛いものがあります。父ジルも将来の族長としてナウシカを厳しく育てている様子が伺われ、父娘の交流は(特に漫画版では)あまり垣間見ることが出来ません。まして谷の人々には「姫様」として振る舞わねばならない…
次にシュワの墓所にて。最終盤、墓所が崩壊するなか、オーマの死に自失するナウシカを救いだしたのが他ならぬアスベルでした。この時のナウシカにはオーマの死を悼む「以外」がなく、放っておけばほぼ確実に死んでいただけに、アスベルあってこその、あの大団円といえます。
一方、映画版との違いも多々あります。まず、王蟲による被害です。映画版ではすんでのところで風の谷もトルメキア軍も全滅を免れますが、漫画版では酸の湖のトルメキア・土鬼軍はほぼ全滅します。この状況では、特にトルメキア側にとっては「王蟲のいたわりと友愛」など鼻で笑いたくなるでしょう。
その結果第三皇子は見事に逃げ遅れ、のみならずカボの軍兵も船団ごと潰滅するわけですが、そこまでの犠牲を払って成し遂げたのが「クシャナを侮辱し逆上させること」だけでは、余りにも虚しい(しかも義妹への打撃は侮辱よりも自身のあっけない死の方が遥かに大きいという…)
先ず末の第三皇子から。第三皇子は4巻、カボ基地でのクシャナとの対峙で初登場し…直ぐに退場(物理的に)します。この時点で上兄二人は先に帰国しており、第三皇子は謂わば第2軍のしんがりを押し付けられた格好でした(このことから第三皇子は兄達に対し少し劣位にあることが推察されます)。
この追加された場面とちょうど対になると思われるのが、庭園でナウシカが語る「母との思い出」です。いわく、自分を決して愛さなかった母に、更に忘れ去られてしまうのが怖いために、母が気づくまでずっーと待っていたのだと。