にも拘らず第三皇子は態々対面してクシャナを侮辱し、更には「全」船団を足止めさせました。どさくさ紛れに義妹を脱出させない(+義妹を多勢で包囲する)ためとはいえ、余りに自軍を蔑ろにし過ぎでしょう。
では何の為の技術保存かといえば、それは為政者への利益供与により墓所の権威強化と世界浄化計画の安定的遂行を達成するためとなりますが、更に踏み込んでその技術が何故軍事技術でなく生命工学だったかとなると、恐らくは「世界浄化計画と墓所建造に係る技術」をそのまま残したからだと考えられます。
即ち、クシャナの辛さは「喪われた愛」ー但し母のクシャナへの愛は変わらず、それがただ「自分」には向けられなくなったーの哀しみと呼べるものでした。そしてその「復讐」がクシャナの、最大の(かつ困ったことにはほぼ唯一の)原動力となります。
だからこそヴ王は親征=「シュワの秘密を独り占めする」為に策を弄します。即ち、クシャナと精鋭第三軍を引き離してすり潰し、劣勢の第二軍を見捨ててきた「バカ息子共」を叱責、併せて国難を訴えることで親征を自ら「お膳立て」します。
(承前)それゆえ大多数には共有困難な思想対決、いわば「神々の戦争」ともなります。最終盤で、シュワの墓所で得た「真実」をナウシカが封印し秘密にしたのも、そのためとなります。
また、シュワ突入直前、ナウシカは同行する蟲使いたちに「世界の真実」を語ります。腐海が世界を浄化した末に、いつか清浄な世界へ辿り着けるという「偽りの真実」を。
それは、「もし鳥達が清浄耐性(?)を得たなら、何故腐海の生物は同様の耐性を得られないのか」です。「青き清浄の地」に見られた腐海植物は非常に小型化したムシゴヤシが少し、それも通常の苔類と併存・競合しており、蟲に至っては全く見られません。ここまでの格差は「自然に」生まれるのでしょうか?
また、彼等は腐海の秘密=浄化の機能とその最終形たる「青き清浄の地」を知るなど、ナウシカ世界の核心に迫る情報を掴む、啓蒙された「知の人々」でもありました。文明との接点を絶ちながらある意味最も文明的というのも、なかなか不思議なものです。