ナウシカが牧人から引き出した「真実」は更に残酷でした。浄化完了とともに滅びる腐海の定めは、浄化のために「愚かな」旧人類によって仕組まれた計画だったと。いわば「滅び」すら茶番だったわけです。これは腐海を絶対神聖視し、逆に外界を穢れた場所と見る節のある「森の人」にとり致命的です。
そして恐らくは、彼等自身もまた自らの「腐海依存」に自覚的でした。だからこそ彼等は腐海の存在意義を揺るがすこととなる、浄化の果て・腐海の尽きる地の真実=「そこでは腐海も、人間すらも生きていけないこと」をタブーとしていたのです。それは正に彼等の「世界の終わり」に他ならないから…
この事を端的に示すのが、精神世界(?)でミラルパと出会ったナウシカのミラルパ評です。いわく「この年寄りと同じように自分は虚無に食われたのだ」と。上人様を心の内で「虚無」にしてしまったナウシカが、ミラルパという別人の中で自ら「虚無」にされていたとは、何という皮肉でしょうか。
更に奇妙なのは、墓所(?)内に多数の僧会幹部が犇めいていることです。7巻では「墓内は聖域で、王以外入れない」とされていたため、整合性を取ろうとすれば、これらは厳密には「墓所」の外、旧世界由来ではない施設と考えられます。
そうしてミラルパはナウシカの内なる「豊かな森」でその住民(ナウシカ自身の分身?)から、文字通り「心からの歓待」を受け、すっかり童心に返ります。これもまた、「愚かなままの土民に絶望」し、恐怖と虚無の黒衣を纏うに至ったミラルパには、久しく味わえなかった「人の心の美しさ」でした。
ヴ王の目論見が(少なくとも彼の望む形では)成就し難いことはナウシカとの論駁からも明らかでした。が、さりはとてそれだけでは「身を挺してナウシカを守る」行動を王が取る動機にはならないでしょう。何が王をそこまで突き動かしたのでしょうか?
このため、浮砲台を中心とする土鬼航空軍が攻撃に出られるのは基本的にトルメキア側のエアカバーがない/戦線が伸び切って息切れした状態であり、いわば「後の先」を取る防衛戦が主たる想定環境となります。何せコルベット10隻もいれば全艦隊が「イチコロ」という状況ですから…