この技術を使った秀作はてんコミ16巻の「ウルトラよろい」でしょうか。
両者が勘違い(不一致)をして最終的に奇跡的に利害が一致してしまう(解決)という、二重構造の話です。
落語や童話等に類似した話がありそうですね。元々「裸の王様」ですし。
似た構造の話として傑作回の19巻「天井うらの宇宙戦争」が挙げられます。
徹底したスターウォーズのパロディが有名な回でもありますが、物語展開が見事です。
まずドラえもん達が本物の宇宙船を発見し、その事情を知らないママやジャイアン達とすれ違います。
宇宙戦争が激化するなか、何も知らないジャイアンのホームランが敵宇宙船を撃墜し、しかもそのことに気づかないまま逃げ帰ってしまう滑稽さが最後の一コマで描かれる。
「不一致」と「対義結合」がうまく使われた回とも言えます。
【会話不成立】
これもすれ違いの一種ですが、分けたほうがいいでしょう。
事情の違うそれぞれのコミュニケーションが上手くいかないおかしさです。漫画でもお笑いのコントでも無茶苦茶使われる『ズレ』ですね
【毒舌】
原作ドラえもんといえば絶妙な毒舌。
これは「会話不成立」や「認識の不一致」の要素も孕んでいます。
「月給安いもんね」と「まぬけな声が聞こえる」は『余計な修飾』というテクニックでもあります。一言余計だとかそういった類のズレですね。反語的賛辞も近いものがあります。
【時間飛ばし(省略)】
本来地続きにあるはずの描写を省いて、あえて空白を作る手法。不一致解決の要素がある?説明が難しいのだけれど、コメディ作品ではよく見る手法です。
最近の作品での使われ方はこんな感じ。画像はさんりようこ先生の「B型H系」
主人公のモテ女子が惚れてしまった鈍感な地味男子と付き合うためにあの手この手を駆使して誘惑するというお話。
B型H系はコメディ漫画の手法がふんだんに駆使されてます。
【頓降法】
レトリック用語。段々と盛り上がってきたものが、急に落ちるように展開するさま。この場合、のび太の必死の抗議を完全に無視してドラえもんが梯子を外している。
段々語調が下がっていくものは漸降法と呼び、これも一緒に扱っておく。
【情報待機】
一コマ間をあえて空けてオチへの叙述のリズムを取る手法。「のび犬」という情報だけを伝えるなら真ん中のコマは要らないのに、わざと「ポン」と置いてある。これは最近の作品のほうが分かりやすいので、やはりB型H系の例を参照します。
情報待機には「スルー」という形式があって、こののび犬の例もスルーに入ると思います。
最近(ってほどでもないけど)の作品を例に挙げましょう。佐渡川準先生の「無敵看板娘」と音井れこ丸先生の「若林くんが寝かせてくれない」から。
最近では「スルー」のコマの背景を黒くするのが定番のようですね。
【攻守逆転】
これはベルクソンが「反転」と呼んでいたもの。ある流れがガラっと反転しまうことで滑稽さを出している。ドラえもんとのび太が前後で同じ調子で嗜めているのは同じくベルクソンが言っていた「反復」の笑い
普通の作劇論でも「リバーサル」等と呼ばれます。
【墓穴を掘る】
これもよくある手法。自ら喋っているうちに墓穴を掘ってしまう滑稽さ。ドラえもんではあまり見られない?
これは「うつけ者の特徴」としてよく使われる手法で、B型H系の主人公の山田はこの手の発言が非常に多いです。