他の誰でも、そこまで本気にはなっていなかった。
皮肉だが、「杏奈とエロいことをしたいから頑張れた」というのは、まじりっけなしの真実だったろう。
そんな盛生が情熱を一心に注いでまで執着する杏奈に価値がないはずがない。だから卑屈になる必要もない。堂々と、正人が好きといえばいいと。
ちなみに小太郎だが、いつもセク●ラするものの肝心な所では踏みとどまってきている。それは奈子が大事だから。しかし、最近の彼女はあまりにも隙だらけなのでかなりヤキモキしている。
他の男にとられる位ならいっそ…と考えている節もあるのでもしかしたらそろそろ進展があるのかもしれない…。
やがてその質問は彼女の「初体験」に及ぶ。
少し戸惑った表情を見せつつも、彼女は話始める。高●に入学してからおよそ一か月くらい経った頃、場所は彼の自宅。それが彼女の初体験が行われた場所
お互い初めてという事もあり、色々と覚えてないがそれでも何となく覚えていることもあるそうで…
そして、その正面には春斗の見たことのないイケメン男子の姿があった。もしかして、あれがずっと妄想の中で嫉妬を抱いていた雪華の彼氏なのか…?
そんな風にやきもきしてする春斗。(一方の友達は告白だと思って野次馬根性を出している)
「いや~だからさ~!やっと杏奈からオーケーもらえたんだよ!」
それは「盛生と杏奈と付き合う事になった」という報告であった。正人は思わず信じられないモノを見る目で盛生を凝視した。彼の中でそれは一番あり得ない事だったのだ。
そんな存在がどうして生きていて、こんな宿屋に奇襲を仕掛けてきたのか?困惑するフィオに魔族の女は、くすくすと笑いながら告げる。
「私を●したお前……だからお前も同じように痛みを味わってくれよ!」
瞬間、魔族の目が赤く光り、肉体に見たこともない力の奔流が溢れる……これは魔法?
盛生は理解した。杏奈は正人が好きだ。だが同じくらい、彼に嫌われることを恐れているのだと…。
そんな彼女が出したのが、現状維持という答えなのだと。だから、二人は仲がいいように見えるけど、付き合ってはいないという関係を続けているのだと。
そんな正人の表情から何をくみ取ったのか?盛生はものすごく「邪気のない笑み」でこういった。
「あ~、それもこれも正人が応援してくれたおかげだな!ありがとな!」
「俺たち!めっちゃ幸せになるから!」
…応援した?誰が?
……幸せになる?誰と誰が?
その言葉に正人は頭が真っ白になる。