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「白子の松原で寝た晩に、頭痛が強くして、熱が出て苦しんだ。翌日は朦朧として松原で寝ていたが、二日ほど経って、ようやく落ち着いたから、道端まで出て、そこに倒れて、通りかかる人に一文ずつもらった。七日くらいは水ばかり飲んで、かろうじて飢えをしのいだ。」
#はやおき訳
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「道の脇の、半町ほど引っ込んだ所に寺があった。そこの坊主がおれを見つけて、毎日麦粥をくれたからようやく力がついた。
二十二、三日ほど松原で寝ていた。坊主が薦を二枚くれて、
『一枚は下へ敷き、もう一枚は掛けて寝なさい』
と言うから、その通りにしてぶらぶら過ごした。」
勝小吉14歳。上方を目指す旅の途中、白子(三重県)で熱を出しますが回復、旅を再開します。石部(滋賀県)まで来たところで参勤交代中の親方と出会い、「江戸へ帰れ」と言われてしまいます。
マンガ『夢酔独言』十九話(1/4)
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「曲がり角の女郎屋で騒いでいた客がおれを見て、
『手前は小僧のくせに、年寄りのように二本杖で歩いているな。病気か』
と聞いた。
『左様でござります』
と答えたら、
『そうであろう。よく死ななかった。どれ、飯をやろう』
と、飯や肴やいろいろのおかずを、竹の皮に包んでくれた。」
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「『今晩は木賃宿へ泊まって、畳の上で寝るがいい』
と言ったから、あつく礼を言ってから、伝馬町の横丁の木賃宿へ行って泊まった。
毎日、府中の家々をもらって歩き、夜になると木賃宿で寝た。しまいには宿賃や食物代が溜まって支払いに困ったから、もらった単衣を六百文の質に入れた。」
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「『手前は病気だな。どこへ行く』
と言うから、
『上方へ行きまする』
と言ったら、
『それはよせ。上方はそんな甘い所じゃない。それより江戸へ帰るがいい。おれが連れて行ってやろう』」
勝小吉14歳。上方を目指して来た石部(滋賀県)で出会った親方に、「江戸へ帰れ」と言われてしまいます。その親方に府中(静岡県)まで連れて来てもらう小吉ですが、その晩、親方はケンカ騒ぎを起こして国元へ帰ることになり…。
マンガ『夢酔独言』(1/4)
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「『まず髪を何とかしろ』
と言って、茶屋の向いの髪結所へ連れて行って、おれを月代にさせた。
『その格好じゃみっともない』
と、奇麗な浴衣と、三尺手拭いをくれた。
『何しろ杖をついていては仕方がない、駕籠に乗れ』
とも言って、駕籠を雇って乗せて、毎日よく世話をしてくれた。」
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「『江戸に入ったら、家まで送ってやろう』
と、府中まで連れてきてくれたが、その晩、親方が博奕のケンカで大騒ぎを起こした。おれの世話をしてくれた親方は国元へ帰ることになり、単物を引き取って、代わりに木綿の古襦袢をくれると、すぐ出て行ってしまった。」
勝小吉14歳。上方を目指す旅の途中、箱根で崖から転落します。何とか小田原まで来た小吉は、出会った人足に、漁師として働かないかとスカウトされますが…。
マンガ『夢酔独言』二十一話(1/4)
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「岩の角で金玉を打って、気絶していたらしかった。
翌日、ようやく意識がハッキリしたが、金玉が痛くて歩くことができない。
二、三日経つと、少しマシになった。そろそろと物乞いしながら歩いたが、箱根宿に差しかかると、金玉が腫れて、膿がたくさん出た。」
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「その明くる日、二子山まで歩いたが、日が暮れるから、その晩はそこで寝た。
明け方、三度飛脚が通りかかって、
『手前は夕べ、ここで寝たのか』
と聞いてきた。
『あい』
と言ったら、
『強いやつだ。よく狼に食われなかったな。今度から、山では寝るな』」