（２／４） 「皆が、 『どうすれば金をやらずに済みますか』 と聞くから、 『それはお話しできませぬ。これまで皆様が臆病故に、丈助にいろいろ出し抜かれたのだ。金をやらずに済ます方法は、今皆様にお話ししますと、すぐに目でも回しなさるから言いませぬ』 と言ったら、皆が怪訝な顔をしていた。」

（３／４） 「金の工面に取りかかった。 江戸でできる金などわずかだ。摂州にある岡野の知行所へ取りに行くことにしたが、まずは当面の岡野家の生活費だ。武州の知行所の者を呼び出して、何とか十二月までの入用を飲ませた。それから武州の次左衛門という庄屋を呼んで、道中入用四十両出させた。」

（４／４） 「十一月九日、江戸を発った。 この年の七月、支配に有髪改名を願い出たが、十月の十七日済で脇坂中務少輔殿のお達しが出て、それから左衛門太郎改め夢酔といった。 月代がまだ伸びないから、当分は惣髪でいた。 道中は、岡野孫一郎が家来左衛門太郎七と名乗って上坂した。」

勝夢酔（小吉）３８歳。江戸の地主に金を用立てるため、摂州にある地主の知行村へ向かいます。アテがあるつもりで村へ来たものの、金は少しも出せないと言われます。 マンガ『夢酔独言』百十三話（１／４） #漫画が読めるハッシュタグ

（２／４） 「御願塚村では、代官の山田新右衛門という者の家に滞在した。江戸での事情を話して、翌日、一村の役人どもを呼び出して金談をした。 その時、代官が言うには、 『地頭の禄高五百石の村で、用立金は七百両余かかります。なかなか、ご入用の金子は、一銭も出せませぬ』 ということだった。」

（３／４） 「おれが江戸で用人や孫一郎に聞いた話では、五百両はあるというから、そのつもりで来たのに、全然違った。 その日は金談はそれきりにして、村方役人一同を帰した。 ひどく困惑したが、しかし出来ぬことはあるまいとも思った。」

（４／４） 「大坂へ時々遊びに行っては、村方のようすを探ると、 『金を出さずに退屈させて、追い返す手段をとるのでございます』 と聞いた。 そこで毎晩、新右衛門やその子供らを残らず呼んで、昔よりの名将智勇の話を話して聞かした。皆喜んで、夜遅くまで聞いていた。」

勝夢酔（小吉）３８歳。摂州の知行村に滞在し、金談を続ける夢酔一行。村方に反発されて竹槍に取り囲まれたり、皮癬ができて温泉へ行ったりします。 マンガ『夢酔独言』百十四話（１／４） #漫画が読めるハッシュタグ

（２／４） 「供の一人が、勝手にいろいろ金子のことを強引に交渉しようとしたものだから、村方役人どもが毎日集まって、騒ぎたてるようになった。 ある時、村方どもが竹槍なぞ持ち出して、おれの旅宿を取り囲んであれこれと抜かした。供の者が怖がって、 『江戸へ帰る』 と言うから叱ってやった。」

（３／４） 「代官の新右衛門は親切で、内緒で金談してもいいと言ってくれた。おれは今に百姓どもを騙して泡を吹かせて、金を出させてやろうと思っていたから、逗留中は何にも余計なことは言わずに、大人しくしていた。」

（４／４） 「皮癬ができて困ったから、毎日伊丹の小山湯へ入りに行った。村には間者を置いておいて、村のようすを聞き出した。いろいろ村方の者が悪だくみをすると聞いたが、何にも知らぬ顔でいた。」

勝夢酔（小吉）３８歳。摂州の知行村で金談を続ける夢酔は、村人の反発を鎮めるため、会ったこともない大坂の町奉行と親しいフリをしますが…。 マンガ『夢酔独言』百十五話（１／４） #漫画が読めるハッシュダグ