(3/4)
「頭(かしら)が、
『年はいくつ。名は何という』
と聞いたから、
『小吉。年は当十七歳』
と答えたら、石川殿は大きな口を開けて、
『十七にしては老けておる』
と、冗談を言って笑っていた。」
#はやおき訳
(2/4)
「息子を常におれが抱いて寝て、他の者には手をつけさせなかった。毎日暴れ散らしたものだから、近所の物が、
『今度岡野様の所へ来た剣術使いは、子を犬に食われておかしくなった』
と、言いおったくらいだった。」
#はやおき訳
(4/4)
「『今度庭へ檻をこしらえて、お前を入れると言いなさるのよ。いろいろ精一郎や皆止めたけれど、少しも耳を貸してくれない。檻も昨日出来上がったから、晩に呼びに行って押し込めると相談が決まったの。庭へ出て見てみなされ』」
(3/4)
「親父が言うには、
『お主は度々悪さをするから、まずしばらく逼塞をして、己の身の振り方を考えなさい。すぐに答えが出せるものでないから、一、二年考えて決めるがいい。とかく、男は学問をしなくてはならぬから、よく本でも見ることだ』
ということだった。」
(3/4)
「『海道筋三島宿では、水戸の播磨守の家来を泊めぬか。おれは御用の儀があって、遠州天宮へ御祈願の使いに行くのだが、仕方がない。今から引き返して、道中奉行に屋敷から相談するとしよう。それまで、御用の物は問屋へ預けるから、大切にしろ』
と言って、おれは稽古道具を投げ込んだ。」
(3/4)
「泣きながら脇差を抜いて振り回し、もはやこれまでと思ったから、腹を切ろうと肌を脱いで石の上に座った。するとその脇にいた白子屋という米屋が止めて、家へ送ってくれた。」