「奇遇」により大河内と出会い、同じ鍋を囲むこととなります。

こうして大河内の指示で働くようになった角栄。 一巻の終わりの方では、謎の「大河内の野望」が語られます。 秘められたもう一つの……原爆ですか？

とはいえ気の利いた漫画評論などできないので食べ物の話をします。 田中角栄が世に出るきっかけとなった重要人物、大河内正敏。 漫画ではすき焼き屋に通っていた安西先……ではなく大河内正敏ですが、実際にはすき焼きが嫌いだったという話です。

作家にして「長崎文化の伝道者」永見徳太郎は明治２３年長崎県生まれ。 昭和２年の東京日日新聞に、永見へのインタビュー記事が載りました。 その内容が当時担当記者だった子母澤寛によって『味覚極楽』にまとめられています。

この高度な金属加工技術は、技術後進国日本が容易にまねることのできない技術でした。 ようやく国産化が開始されたのが、大正時代。 なぜ大正時代に可能になったのかというと、おそらくこれが原因。 成金を生んだ、第一次世界大戦特需。

『十十虫は夢を見る』第９巻より、松屋颪（おろし）の説明。 当時の「高層ビル」だった松屋周辺にはビル風が吹きました。 スカートを捲り上げるこのビル風を松屋颪と称したのです。

これは昭和５年の銀座地図。 富士アイスは交差点を挟んで松屋の斜向いにあります。 ここの二階は絶好のパンチラ鑑賞スポットだったわけです。

これは昭和５年の銀座飲食店地図からの抜粋。 新橋から京橋まで、南北に抜ける目抜き通り周辺の区画です。 当時どのような店がアメリカの影響下にあったかを、左の新橋側から見てみます。

まず千疋屋パーラー。おそらくアメリカの影響を受けて作られた店です。後ほど解説します。 なぜか地図にはありませんが、資生堂のレストラン（現在の資生堂パーラー）が当時存在した場所もこの区画です。 資生堂レストランももともとは、創業者のアメリカ視察から生まれたものです。

北上してつぎの区画。 東側に森永キャンデーストアがありますが、これもアメリカ視察から生まれた店。不二家キャンデーストアはその模倣でしょう。 右上（北西）の区画にニューヨークバーがありますが、その右がカフェータイガーが経営していたアメリカ式中華料理屋です。

最後の京橋エリアです（こうしてみると京橋も新橋も「橋」であったことがわかります）。 ここはアメリカ飲食店集中エリアで、明治製菓喫茶部、三共ソーダファウンテン、オリンピック、バッカスがそれにあたります。 なぜか描かれていませんが、アメリカ式中華のアスターもこの区画です。

昭和５年の銀座の目抜き通りに存在した森永キャンデーストアは、アメリカの模倣から始まったのです。