見方によっては、それを寂しいことだと思う人もいるだろう。しかしまだ若い人、現役バリバリの人が突然世を去ることの悲しみに比べたら、逝く方も見送る方も、その孤独を引き受けることが他人に対する優しさなのだと思う。
多くの場合、このような別れを迎えるのは、人間にとってむしろ幸福なことなのだと思う。人と人は次第に疎遠になることで、長い時間をかけて少しずつ「別れ」を経験し、避けられぬ死の衝撃と悲しみを和らげることが出来るのだから。
松本零士も、私の少年時代を決定的に形作った人ではあるが、逆に言えば20歳を過ぎてから彼の新作漫画を読んだことは無いのにも気づく。哲郎にとってのメーテルと同じように、少年時代に出会い、決定的な影響を受け、しかし大人になってからは再会することが無かった人(当時の漫画は読み返す)。
しかしこの歳まで生きてくると分かることもある。最近 大きな影響を受けた人物のさまざまな訃報が流れてくるが、大抵の人は、それなりに年齢を重ねているため、近年の活動は鈍り気味で、自分との関係も疎遠になっている人が多い。つまりは「長い時間をかけて少しずつ死を受け入れている」ということ。
なお東京国際映画祭で見た『生きる LIVING』は正式な日本公開が来年なので来年回しとした。もしあれを今年のベストに組み入れるなら、1位か2位のどちらかにしただろう。
劇場映画を製作するのであれば、現時点ではあのエピソードしかありえない大スペクタクルなので、ほぼ間違い無いだろう。これまでは何気にコメディ的な文脈でしか描かれていなかったヨルさんの、殺し屋いばら姫としての真の力が描かれるのでファン必見ですわよ!(*´д`*)
そしてこの作品の後半にがっちり心を掴まれた理由の一つは、この物語がつい最近見たばかりの映画『千夜、一夜』『ある男』の2作品、とりわけ前者ともろに地続きの世界だったから。おかげで、作品世界が何倍にも広がっていくシンクロニシティ。