藤本タツキ『さよなら絵梨』。『君の名前で僕を呼んで』(2017)と『プロジェクトV』(2020)が新作コーナーに並んでる時空の歪んだレンタルDVDショップが出てくる。
蚊帳りく『店内ご利用ですか?』現代日本の都市部の明るさの表現が凄い(街灯の光の描写が見事)。室内/店内は勿論街中でもホラーやフィルム・ノワール的な黒さは排除されてるけど、明るさは性犯罪の阻止にはまったく役に立っていない(街なんてそんなもんや/ゴミみたいなまち!)。
「かけ足が波に乗りたるかもしれぬ」、凄いよかった。世界が狂ってるというのは何もあの家の環境だけじゃなくて、大きすぎる富士山とかでかい虫とか地殻とマントルの境目なんかも狂った世界が露出してる部分であり、俳句はそれを自分の内に溜めていつでも取り出せる方法の一つとしてある。
6ページ目、状況説明が終わってからの4コマ目にこの回のタイトル通り2羽の鳥が飛んでいる絵。22ページ目の4〜5コマ目に3羽の鳥。3は24ページにも通ずるが「三」鷹にも通ずる。さらに7ページ目には第「四」東高等学校という数字まで。3にチェンソーマンが加わり4になる?
主要登場人物がマネキンのフリをする、あるいはマネキンが動き出したかのように現れるところを描いているためか、ヒロインが悪漢に囚われたシーンで描かれるこのコマが異様なまでに不吉さを放っている。
『チェンソーマン』第99話「2羽」。ニュースを告げるテレビの吹き出し、窓に映る自分の顔を見た三鷹アサのセリフ、テレビに重なる戦争の悪魔がそれに応答する。鏡面/分身性の強調が見事。
5コマ目の「まぜて」が強烈な印象をもたらすが、4コマ目の巨大パンの俯瞰が5コマ目においてテレビモニターのいうフレーム内フレームでコマ内に投影され、さらに「まぜて」というセリフの吹き出しがその画面に重なることで参与を促すように響く。イメージが行動を規定していく。