そして彼は前王朝を打倒すると、新王として墓所(と教団)に迎え入れられ、そしてナウシカと同様に墓所の主と対面することとなります。ナウシカと良く似た彼が、しかし彼女と決定的に道を違えたのは、ここで彼が墓所の主に応えた(屈服した?)ことでした。
その点では寧ろナウシカの方が異例とも言えます。何せ彼女は、墓所が保障する窮屈で単線な救済計画より、人類滅亡すら包含する世界の「可能性」を広げることを選んだのですから(その意味で矢張ナウシカは「道を示す者」であり、人々と共に王道を歩む者=王にはなりえないと個人的には思われます)
まず「ご禁制」について。5巻冒頭でシュワの僧会幹部が皇兄ナムリスを非難しつつ語るところによれば、巨神兵復活に係る複製技術やヒドラ培養等は全て先帝=初代神聖皇帝により禁止されています。これは墓所由来技術の精華=生命工学系技術の大宗を事実上自ら封印したに等しくなります。
次に、延命への拘りです。幼き日のミラルパにトラウマを残した様に、初代神聖神聖皇帝は無理な延命措置が破綻して肉体崩壊死という悲惨な最期を遂げますが、凡そ百年の治世を全うします。即位時に二十歳としても百二十歳まで現役は確かに尋常ではありません。何が彼をそこまで駆り立てたのでしょうか?
その鍵になるのが次代ミラルパの治世です。兄ナムリス曰く、最初の二十年は慈悲深い名君だったミラルパは、いつまでも愚かな土民を憎むようになったといいます。ということは、帝国誕生ら百数十年を経てなお、初代皇帝の悲願たる民衆救済は実現できていない(或いは既に喪われた)ことになります。
更にいえば、初代皇帝皇帝崩御時のミラルパがかなり幼く見える点も気がかりです。夢の中の場面なのでミラルパが幼児退行している可能性もありますが、もし本当に夢の中のとおり当時のミラルパが十代くらいの場合、なんと百歳を超えてからの子となります。
と今回の考察はこんなところですが、今宵はもう少し妄想の翼を広げてみましょう。まず、ミラルパ&ナムリス兄弟の「誕生」についてです。紙幅の関係上か、二人の「母」は勿論、兄弟の妃となる女性も全く出てきません。都シュワにいるのは、ウンザリするほどの「クソ坊主共」のみ(笑)です。
一つ(苦し紛れに)考えられるのは、ミラルパはシュワにいる限りは投薬その他の治療によりかなり若々しい肉体を維持できている点です。実際、ミラルパは初登場時にはかなりパワフルで髪もフサフサなのが、シュワを離れ戦地にいる間にどんどん「劣化」しています。
今週の #逃げ上手の若君 、小笠原貞宗御大の強敵感がマシマシで痺れる。獅子は兎を狩るにも死力を尽くすというが、時行君に正座で相対する貞宗サンもまた、敬意を払って全力で倒すべき「敵」として認識したということなのであろう。頑張れ時行君!
朝っぱらから「十年前の政権不振は経験不足のせい、今回は特に根拠はないけど大丈夫」というノーテンキ発言を聞いたときの、僕の心の大佐の叫び(↓)。まあこの場合、相手は科学者ではなく政治家ですが…
世代間対立についてここまで端的に切り取った表現、なかなか無いのではないだろうか(藤子・F・不二雄「征地球論」より)。やはり御大は偉大…!
「征地球論」ではこの場面も秀逸。拙速と遅巧、いずれを是とすべきかは宇宙人にも中々難しいようで…。因みにこの短編、オチも非常に秀逸で、彼らが随分長期スパンの文明論を論じ続けているのは何故かという伏線回収にもなっており、オススメです。