巨神兵の骨格は超硬質セラミックとされます。「火の七日間」直前の超技術によるセラミックがどんな材質・レベルのものかは不明ですが、宇宙船の残骸やシュワ周辺の「砂漠」を見る限り千年そこらで自然に分解することはなさそうです。
ここで思い出されるのが蟲使いの村での王蟲培養です。即ち、王蟲の群れを怒りで操るエサとするため、土鬼僧会は蟲使い達に王蟲の卵の欠片を手に入れさせ、これを材料に王蟲を培養していました。
そこに「変化」が起きるのは4巻のカボ編で、仇の一人である第三皇子があっけなく死んでしまい、「復讐」という自身のアイデンティティが瓦解した時でした。この時クシャナは虚脱状態だったこともありますが、一時的に憎悪を捨て、無心に子守唄を歌ったことで蟲の攻撃から辛くも生き残ります。
そしてまた彼(?)は縋るように呟きます。「でも(自分にナウシカという大事な)名を(明かして)くれたじゃないか」≒だからいつかまた庭園に戻ってきてくれるかもしれない、と。そんな微かな希望を胸に、彼(?)は永遠の墓守という虚無に耐えていくのだろうか…
ナムリスの奔放、後先考えない無茶苦茶な行動が、「墓所の主」という軛を逃れようという足掻きであったとしたならば、そしてソレを以てなお逃れられぬ軛であったならば、それは恐ろしい絶望そのものであったと言えるでしょう。
その民衆への不信が最も端的に現れるのが、彼の「青き衣の者」への恐怖と執着です。ソレを民衆の邪教≒反ミラルパのシンボルと見なしたミラルパは「容疑者」が現れる度に取り乱し捕えては八裂きにしていきます。侮蔑し憎悪する存在(民衆)に同時に恐れ慄く…正に老皇帝の断末魔と言えます。
そして次の出会い…の前に、釈放された捕虜達からナウシカの人となりを聞く場面を挟むのが巧みな所です。チヤルカのナウシカ理解が段階を踏んで進んでいること、またその「情報源」が多角的かつ「彼女は本当に帝国の敵か?」という疑念を深める方向に沿っています。
また、チヤルカのこの対応が些か後手に回り、結果ユパの死という悲劇の一因になった面は否めません。しかし同時に、チヤルカ達と共に動いた女性や子供・老人・僧侶らの「人の鎖」が過激派の気勢を削ぎ、ユパ一人の犠牲に「抑え込んだ」のもまた事実なのです。
そういえば、墓所内には人間の死体を「エサ」にヒドラを培養する装置がありましたが、墓所自身がヒドラ=浄化の神である点といい、「神人の地」の中枢装置を彷彿とさせますね。