決意を決めたビビアン王女を
「18年お側に仕えてきたんです」
「止めると思ったのですか」
と全てを肯定し、
「わたしにだけは話してくれてもいいじゃない」
と寂しさを滲ませるルバ。
今年のストーリー百合作品における"再生産"の文脈を色々と見返していたのですが。
『HUNTER×HUNTER』王位継承編における、蠱毒的発想による殺し合いの中で共に行き続けるための霊獣を生み、そして霊獣として生まれ変わるカチョウ・フウゲツの「いつでも一緒。死してなお」の文脈がとても好きです。
11月30日発売の宇仁田ゆみ先生『宇仁田ゆみ作品集 ふかしぎ草紙』。
収録の宇仁田先生初ガールズラブ短編『モコ』が素敵。
同級生の雪ちゃんのことを好きになってしまった紅美。
隠していた想いを雪ちゃんに知られてギクシャクしてしまう二人ですが、それを越えて着地する姿がとても鮮やかです。
『宇仁田ゆみ作品集 ふかしぎ草紙』収録の『T*ss』で描かれる主人公二人の関係も百合味があって素敵。
背が小さくて合う服が少ない二十歳のナオと、背が大きくて合う服がない中学生の幸花。
同じ悩みを持つ二人が自分達に合う浴衣を作ろうと一緒に時間を過ごす中で年の差を越えて繋がっていく青春譚。
ガワは女の子だけれど中身は菌というクアドラをどうとらえるかは今考えると改めて面白いのですが(11年刊行作品)、ナナとクアドラが互いに向ける思いやりの気持ちがとても美しい。
"老いた太陽系を捨てる日のために"という生物研究者二条ナオの目的に翻弄された二人の行き着く先も素敵です。
メイドに見えるけれどこちらは侍女。
家につくメイドと人につく侍女は根本的にその性質が違うのだとか。
好きな女性を大事にしたいけれど家を優先しなくてはいけないという立場があって、ジレンマに引き裂かれるメイド百合よいですね。
瑚澄遊智先生『Dear Emily...~da capo~』。
孤児院育ちのメイド・エミリーが奉公先のコーレスタン邸で美沙璃お嬢様、同じ孤児院育ちのビアンカ、監督役のロゼらと交流していくお仕事漫画です。
恋愛感情はないですが、『ARIA』のような優しい日常作品が好きな方にオススメです。
家につくメイド。
人につく侍女。
人を優先するという視点で見ると
「たとえ家が滅ぼうともあなたの意思を尊重する」
という侍女ルバさんの覚悟はとても素敵。
課題図書にはしませんがメイド百合を考える時に面白いので、冨明仁先生『ストラヴァガンツァ-異彩の姫-』ぜひ読んでみてください。
人を生かすために自分の命すら投げ出すルバさん。
侍女の中の侍女。
そしてルバさんにここまで想わせるヒビアン王女。
人たらし。
前川さんの意外な食いつきに戸惑いつつも自分の"好き"を誰かと共有でにることに素直に喜びを感じる清水さんが可愛らしい。
宮澤伊織先生が言うところの"ここすき"(https://t.co/4VnYZLTM11)で繋がる清水さんの喜びは『メタモルフォーゼの縁側』にも通じ、読んでいると優しい感動に包まれるのですが…