「そこに辿り着くことはできるのか」という答えを出すことが難しいぐるぐるとした日々を、言葉を交わしながら乗り越え続けた二人がどういう結末を迎えるかは、ぜひ本書を読んで確かめてほしいです。
三浦しをん先生が述べるところの言葉を尽くして縁を繋いで行く女の人同士の関係性。
「誰かさん」に誘われ「談話室」へと通うようになったたすくは、集まる人々との触れ合いを通して自分を理解し、そして周囲と繋がっていく。
というお話。
「談話室」に集まる人々が空き家再生事業に携わるNPOのメンバーということもあり個人的には"再生"というのがテーマの一つにあるかと思います。
もちろん思春期的な要素もありますが、松浦理英子先生が述べるところの肌性感についての言及があったり、女性の柔らかい体に驚きつつ誘われる描写がわりと共通しているような気がします。
レディースコミックならではの体と心の文脈。
小玉ユキ先生『波の上の月』。
人間と人魚の心の交流を描いた短編集『光の海』収録作。
同性に対して我が身が滅んでも構わない程の熱烈な恋をする人魚の男の子と、同じ想いを抱きつつも口にせなまま大人になった人間の女性。
人魚に心を揺さぶられ、最後に言えなかった一言を口にする社会人百合。
好きでやまない彼女に対して、背中を見つめることしかできないという主人公の姿を描いたシーン。
時を経てなお好意だけでは超えられない、16年前と変わらぬ何かが感じられて個人的にはすごく好きです。
松浦理英子先生の信者なので性能領域というものにグッときます。
千春と寮の同室の星野真夜との関係も②巻の見所の一つなので詳しくはぜひコミックにてお確かめ下さい。
限られた時間を思って沸き上がる
「時間が止まればいいのに」
という真摯な願いは『マリア様がみてる3 いばらの森』の聖様の願いにも通じる、学生百合ならではの切なさが迸る名シーンです。
時間を止められる能力を持った森谷さんと、森谷さんが止めた時間の中で唯一自由に動ける村上さん。
二人が誰も知らない秘密の時間を共有しながら仲を深めていく物語です。
周りと空気を合わせられずに一人でいる森谷さんと、合わせすぎて本当の友達がいない村上さんの恋の顛末をぜひご一読下さい。
その後、久瑠美の頑張りを目の当たりにし、彼女への信頼を深めていく。
そんな逆転の社会人百合が素敵な小森陽一先生、畑優以先生『ふしぎの国の波平さん』。
※百合がメインではありません。アミューズメントパークで情熱をもって働く人々を描いたお仕事漫画です。
美生の一言によって更に変わっていく二人の結末はぜひ本書でお確かめください。
百合ではないですが美生以外の二人の姉の恋模様もそれぞれとても感動的なのでオススメです。