これな。一コマごとにとんでもなく飛躍がある。ムチャな状況を連続させている。ドラマの脚本ならボツにされるんじゃないか。しかし恐ろしいことに、マンガだと別に気にもならずスッと読めちゃう。藤子Fがマンガの特性や許容値を、どれくらいの飛躍になら読者がついてくるかを正確に知っているからだ。
たとえば古代進にこういう要素はないのである。結果、キャラクターに深みが出ない。逆にシャアのロリコンとかは深刻すぎて魅力に繋がらない。「サイヤ人は働かない」皮肉の効いたこの設定一つで、悟空はぐっと魅力的なキャラクターになる。長年ギャグ漫画で鍛えたセンスであろう。働くわけねえよな。
今話題になっているこの図、はじめて見たときには本当にびっくりした。必要最低限に描かれた筋肉の緊張感、愛撫するかのようにくねる指先の妖しさ、「弓を引く」という行為をここまで繊細にエロティックに描いた者はいないのではないか。
今気づいたのだが、これはもはや金額の話ではなくて健康の話ではなかろうか。松のやに朝行けばトンカツなんて400円で食えるが、じゃあいつでも食えるかと言えば食えない。ビビる自分がいる。絶対腹の脂肪になる。ああ、いつでも食えるくらいに節制した自分でありたい。いや一昨日食ったけど。
ここでバカ中学生のひろしが「翼よ! あれが巴里の灯だ!」を引用することに反応が多くビックリしている。つまりスルーするオレの人間が古いのだ。当時の読者にとって57年の映画ネタとして、見たことがなくとも普通に語り継がれ、今で言う「我が生涯に一片の悔い無し」とかに近いのではないか。
谷口ジローである。読み返すたびに「ああ、忘れていた。こんな風に描かなきゃいけない」と思い。読み終えるたびに「ああ、忘れていた。読まなきゃよかった」と思う。描けるわけなかろう。なんでこんな漫画があるんだ。他が困るだろう。もっと雑に手を抜け。西原理恵子を見習え。